認知症患者の不安に寄り添う「バリデーション」とは?
アルツハイマー型認知症になると、自分の思いをうまく言葉で伝えられず、周囲との意思疎通が難しくなるケースが少なくありません。そういった認知症の方とコミュニケーションを取る方法に「バリデーション」があります。これは、傾聴、受容、共感を基本的な姿勢とするもので、1963年にアメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・ファイル氏によって考案されました。
認知症の方の中には、過去のトラウマ的な「心に残った傷」を過去の出来事として清算できている方もいれば、亡くなるまでずっと解決できずに奮闘している方もいらっしゃいます。とりわけ、長い人生で多くの「大切な方との別れ」を経験してきた高齢者は、その大切な方に対する後悔が心に残ったままになっていることも少なくありません。
バリデーションでは、コミュニケーションを通して本人が抱える苦しみに共感を示し分かち合い、やがて訪れる死が安らかなものとなるようにその方の不安に寄り添います。
コミュニケーションを取る際に重要なのが「介護者の都合」で相手を変化させようとせず、誠実に寄り添うことです。たとえば、認知症の方が「(すでに亡くなっている)お母さんに会いに家に帰りたい」と訴えた場合、介護者の方は気持ちを落ち着かせようとして、つい「お迎えの車が来るからお茶を飲んで待ちましょう」と、その場しのぎのウソをついてしまいがちです。しかし、認知症の方は、親がすでに亡くなっているのをどこか心の奥深くで認識していて、もう会えなくなってしまったお母さんの愛情を求めた結果、「会いたい」という言動につながっているのかもしれません。