認知症の人と心を交わす「バリデーション」の具体的な方法は?
以前、当施設に入居される90代の女性が、深夜に慌てた様子で「今すぐお父さんの手伝いに行かなきゃ!」とスタッフに訴えているのを目にしました。話を聞くと、そのお父さんは都内で焼き鳥屋さんを営んでいるといいます。「お父さんが大変そうに感じるのはどういうとき?」「今すぐ行かなきゃいけないの?」など、いくつか質問を投げかけていると、「そういえば家族のために働きすぎて死んでしまったんだわ……」と涙をこぼされていました。
認知症の方は、心の奥底ではすでに親が亡くなっているのを分かっていながら、親に対する後悔や無念が残っていて「会いたい」や「助けたい」といった言動につながっているケースも少なくありません。
ここまで紹介してきたのはひとつの例にしか過ぎません。認知症の方の状態はさまざまです。バリデーションではその個々の状態に合わせたテクニックを使います。他にも言語的、非言語的テクニックがありますが、いずれにせよ、共感を持ち、相手の気持ちに寄り添うことが何より大切です。
バリデーションを通して心の奥底に隠されていた感情が表出されると、本人の不安やストレスが和らいで落ち着きを取り戻せるだけでなく、介護者側も興奮を引き起こす理由が分かると介護ストレスが軽減されていくのです。