長寿研究のいまを知る(11)やせる2型糖尿病薬と長寿との関係…抗がん剤より副作用が少ない
さらに、加齢に伴うフレイルの改善や、早老症マウスの寿命の延長なども観察できたとも報告している。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「繰り返しになりますが、細胞の老化は分裂寿命を迎えなくても、放射線や有害物質などによってDNAがダメージを受けたり、がん遺伝子が活性化した場合に起こります。細胞は老化することで、自らが異常な細胞となったり、がん化したりするのを未然に防ぎます。通常、分裂しなくなると、SASP因子と呼ばれる炎症物質を分泌することで免疫組織を活性化して、自ら除去するようにプログラムされています。しかし、何らかの理由でこのプログラムが滞ることが老化が進む原因のひとつと考えられています。そこで、がん細胞と同じく老化細胞の表面にも発現する免疫チェックポイント分子を抑制させる、がん治療薬・免疫チェックポイント阻害薬が老化細胞除去薬のひとつとして関心を持たれています。しかし、がん治療薬ですから副作用が大きい。そこで、メトホルミンやSGLT2阻害薬などの研究が進んでいるのです」