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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

料理ができない父親が1人暮らしに…食事問題をどうする?

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作って食べて楽しいと思える力を身につけよう

 食は生きる力です。配偶者を亡くした後、悲しみを抱きつつ、しかし生き生きと暮らしている方はおおむね「自分で作って食べる」力を持っていて、それが「食べる楽しみ=生きる楽しみ」につながっているように感じます。

 私自身、趣味がそば打ちで、パンケーキをいかにきれいに焼くか、うまいフワフワなだし巻き卵をいかに焼くかが関心事です。この連載を読んでくださっている方、もし料理経験がないようであれば、心身ともに元気なうちに、料理を楽しむ第一歩を踏み出してほしいと思います。

 料理研究家の土井善晴さんは「一汁一菜」を提案されています。著書で書かれている「一菜」は具だくさんのお味噌汁。「毎日の食事作りが大変だ」と言う人が多いけれども、日常の食事はご飯と具だくさんの一汁一菜と決めてしまえば、食事作りのストレスがなくなると、土井さんはおっしゃっています。 

 土井さんがおっしゃる一汁一菜というのは「必ず和食に」という意味ではなく、食事の基本スタイル。何をどう食べるかは自由でいい。お味噌汁というと「煮干しでダシを取って、お豆腐と揚げとネギを入れて」という典型的なスタイルを頭に思い浮かべる方もいるかもしれませんが、具材も自由でいい。ダシは、具材から出るので取らなくてもOK、とのこと。

 この連載の担当者が土井さんにインタビューをした時は、「残り物でシューマイがあるなら、それを入れたっていい。唐揚げ、ソーセージ、ベーコン……。味噌汁の具材はなんでもいい」と言われたそうです。実際、自宅に帰り、冷凍庫で眠っていたシューマイと、冷蔵庫のしなびた野菜をたくさん入れたら「どんぶり一杯で大満足のおかずになった」(担当者)そうですよ。

 いま健康で自立している方は、年を取って弱った自分をリアルには想像できないでしょう。しかし、必ず「その時」がやって来る。今日の自分が一番若いのですから、今日から「その時」へ向けての準備を始めるべきです。「自分で作り、1人でも食事を楽しめる」力を身につけるのも、まさに今日から。「食べ歩きが好き」や「日々家族のために食事を作っている」というのとは、また違う次元の話です。

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