顕正会(前編)強引な勧誘に全国の大学が警戒する日蓮正宗教団
顕正会の「日蓮を信仰しなければ日本は滅ぶ」という憂国的な思想に共鳴したのか、90年代には自衛隊内に多数の信者が生まれた。自衛隊内に信者による非公式組織「足軽の会」ができ、顕正会内には自衛隊員で構成される「男子部第2隊」が組織された。
94年には、第1空挺団普通科群長の1等陸佐の顕正会信者が、富士演習場で民間人の顕正会信者に自動小銃の実弾射撃を行わせる事件も。さらに97年、顕正会がこの年の7月に“重大行動”を起こすとの情報が公安当局に入った。当時はオウム真理教・地下鉄サリン事件(95年)からわずか2年。公安や防衛庁(当時)の関係者たちは背筋が凍ったことだろう。
クーデターを警戒した公安当局は教団施設を24時間体制で監視。自衛隊では信者の隊員が武器庫の鍵を持つ当直任務から外された。そして7月16日、その“重大行動”が開始された。
この日、浅井昭衛会長の著書が発刊され、その広告が主要全国紙にデカデカと掲載された。信者たちは公務員などに書籍を送る活動を開始。何のことはない、クーデターではなく浅井会長の本の宣伝だったのである。公安当局と防衛庁は肩透かしを食らった。