過酷な避難所生活を救うのは「たき火と笑顔」 阪神・淡路大震災での思い出
■極力、体を動かす
さらに気を付けたいのは、ジーッとせずに極力、体を動かすことです。私はいろいろな現場を見てきましたが、大事なのは被災者と支援者で分かれてしまわないこと。例えば、食事なら皆で作って、皆で食べる。ある避難所では、焼きそばや豚汁などを作る際、あるおばちゃんが駆け寄ってきて「私にもやらせて~」と。それで、ものすごい手際で食材を包丁でバーッと切る。彼女は「こういうのやると生き返るわー!」とうれしそうでした。何かに取り組むと前向きになれるものです。
何より大事なのはたき火でしょう。人生そのものなんですよ、たき火って。火がついて、燃え盛って、それが崩れて、最後は残り火になるーー。ひとつの人生を見ているようで退屈しない。暖を取れるだけでなく、悲しみもふわっと浄化してくれる効果がありますね。
阪神・淡路大震災の時は、そこかしこにたき火ができていて、それぞれに人が集まっている。あるたき火では「ワハハ!」と笑い声が上がっていました。聞いてみると、発災直後にタンスの下敷きになったおばちゃんが「お父さん、助けて!」と叫ぶと、旦那は「オレも潰されとるんじゃー」と。そのうちに「火事だ!」という声が上がったそうなのですが、途端におばちゃんはバーッとタンスをはねのけ「お父さんを踏み潰しながら逃げたのよ」と冗談めかして話していた。それで皆、笑い声を上げていたんですね。すると続々と人が集まり輪ができる。