著者のコラム一覧
山田一仁フォトジャーナリスト

1957年1月1日生まれ。岐阜県出身。千葉大工学部画像工学科卒業後、文藝春秋社に入社。フリーランスとして五輪はロス、ソウル、バルセロナ、シドニー、カルガリ、リレハンメルなど取材。サッカーW杯は1990年イタリア大会から、ユーロは1996年英国大会から取材。89年のベルリンの壁、ルーマニア革命、91年ソ連クーデター、93年ロシア内紛、95年チェチェン紛争など現地取材。英プレミアリーグの撮影ライセンスを日本人フリーランスカメラマンとして唯一保有。Jリーグ岐阜のオフィシャルカメラマンを務めている。

自分だけが生き残ったSF映画の主人公のような気がした

公開日: 更新日:

 今回の旅では、シンガポールから大阪への便がキャンセルで、既に<4回目のキャンセル>だ。スペイン・マドリード在住の後輩Mカメラマンから「28日のロンドン発・アムステルダム経由の大阪行きのKLMが数席空いています」との情報が。何とか帰国便を確保した。

 午後10時30分にロンドン市内の宿に到着。ブラジル・マリンガから丸3日かかったことになる。

▼3月25日 水曜

 市内取材のためにロンドンバスの2階席を利用した。いつも観光客であふれているバッキンガム宮殿前は誰もいない。首相官邸に向かって歩いた。遠くに青いビニール袋を被った<少女>が見える。近づいてみると医療スタッフだった。女医と看護師のようだ。しかし2人ともNHSのユニホームを着ていないのでボランティアの医療従事者ということか? ともあれ青いビニール袋というのは……もしかしたら防護服が足りないのでビニール袋で代用しているのか?

 ベンチに座っている老人の身なりはちゃんとしているが、どうやらホームレスのようだ。大きなリュックに晴れているのに傘を持っている。それにしても、急速に感染拡大が進んでいる欧州にあって、ホームレスを検査する国があるだろうか? イングランドには<ゆりかごから墓場まで>という言葉があるが、NHSの治療はイングランド在住者のみならず、旅行者であっても原則無料である。30年前、語学留学中にレントゲン検査を受けたが、一銭も払わなかったことを思い出した。自分たちも感染するかも知れない。そんなリスクを背負いながら、ホームレスの治療に当たった女性医療従事者。心の底から彼女たちの行為に感動し、カメラの液晶画面が滲んでしまった。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末