田嶋幸三JFA会長激白 18日間の入院で直面した「死の恐怖」
新型コロナウイルスが地球規模で猛威を振るう中、3月17日に日本人要人の陽性反応第1号としてJFA(日本サッカー協会)の田嶋幸三会長(62)の名前が報じられた。20日には、日本を代表するコメディアン志村けんさんが、やはり新型コロナに感染、入院9日後(29日)に他界したことで日本中に大きな衝撃が走った。新型コロナの恐ろしさを身をもって経験し、現在も<自主隔離>生活を送っている田嶋会長にサッカージャーナリストの六川亨氏が、ビデオ会議システムを通して独占インタビュー。コロナ感染者としての苦悩、目の当たりにした医療現場の現実、サッカー界への提言などを聞いた。
■医師から「自身の免疫で対処するしかない」
3月14日、東京に季節外れの雪が降った。微熱が出て寒気を感じた田嶋会長は、16日に国立スポーツ科学センターに内科医として勤務する夫人(土肥美智子氏)の勧めで保健所に相談。肺炎と診断され、PCR検査を受けた結果、17日に新型コロナに感染していることが判明。すぐさま感染症の指定病院に隔離されることになった。
「志村けんさんが亡くなったということは、もの凄いショックでしたね。入院中にテレビを見ていると志村さんのお兄さんが、お亡くなりになる3日前に(病室の)窓越しにちょっとお会いになったとか、死に目に会えなかったとか、そういう話は知っていました。入院中は点滴と飲み薬、それと採血、採尿、便などの検査がありました。(入院当初に)人工呼吸器やエクモ(人工心肺装置)を使用しても効果がみられない場合は『田嶋さん自身の免疫で対処するしかないんですよ』と言われたときには、正直に言って『えぇっ!』と思いました。(亡くなった場合は)指定感染症ということで、すぐに火葬ということも知っていました。こんなにも早く命を奪うものなのか――とお亡くなりになって悲しいという思いを通り越し、表現できない気持ちになりました」
18日間に及んだ入院中は「隔離されていたので部屋からは出られませんでした。家族とは電話で話すだけ。もし死んでいたら志村さんのように家族とは会えないまま、火葬されていたことでしょう」と現実的な死の恐怖に直面した。
新型コロナに感染するまでは、JFA会長としての職務を<当たり前のように>務めてきた。それだけに田嶋会長も「これまで肺炎になったこともなく、(今回は)咳き込んだりすることもなかった。(新型コロナを)意識することはありませんでした。3月のUEFA(欧州サッカー連盟)の会合でお会いしたスイスやセルビアのサッカー協会の会長が感染したというニュースを聞かなかったら、仕事をそのまま続けていたかも知れません」と述懐する。
医療崩壊の危機を目の当たりに
田嶋会長は、4月2日に2度目の陰性が確認されて退院した。振り返ると新型コロナの脅威とともに<医療崩壊の危機>を実感する日々だった。
「医師も看護師もエプロンを大きくしたような防護服で体を覆い、防護マスク、ゴーグル、手袋など毎回毎回(診察・処置が終われば)捨てていくわけですよ。そういった必要なものが足りなくなり、なおかつ患者さんが増えていき、海外で起きている<医療従事者が感染してしまう>という状況も増えました。このことが医療崩壊の一番の原因となります。絶対に医療崩壊を招いてはいけないことを痛感しました」
安倍首相は4月7日に東京都、大阪府など7都府県に緊急事態宣言を発令した。にもかかわらず感染者の増加に歯止めがかからない。
田嶋会長は<保健所の役割>についても思いを寄せた。保健所が<すべての新型コロナ感染疑惑者>を受け入れ、病院のベッドが軽度の患者によって占められた場合、重症患者の受け入れは難しくなる。保健所は、批判を覚悟の上で<病床数の確保>に努力したのだろう。
「一時期、保健所の方がもの凄く責められていました。私についても、テレビなどで<(同居の)妻ですらPCR検査を受けさせてくれなかった>というニュアンスで報じられましたが、妻は冷静に『発症していないのにPCR検査を受けられないのは仕方ない』と言っていましたし、私も患者が増えてベッドが埋まっていく中、重症な方が出てきても<入院できなくなる>と不安に思いました。ある意味、保健所の方たちは<防波堤になってくれた>と思います」
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次回(4月14日公開予定)は、新型コロナ罹患のきっかけと思われるUEFA理事会や女子W杯日本招致のために欧米を奔走していた2月以降の足跡をたどりながら、新型コロナの脅威を語り続ける。
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