「肥満は重症化リスク」新型コロナは相撲力士の脅威なのか

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 相撲協会が恐れていたことが現実になった。

 25日、大相撲の高田川親方(53=元関脇安芸乃島)とその弟子、十両の白鷹山(25)が新型コロナウイルスに感染したことが明らかになった。高田川親方は発熱の症状があり、23日にPCR検査を受け、陽性と判明。白鷹山は症状こそなかったものの、24日に検査を受け、感染が確認された。他にも部屋や名前は非公開ながら、幕下以下の4力士が陽性反応。これで相撲協会からはすでに陽性が判明している力士を含め、感染者はのべ7人となった。

 相撲協会も不要不急の外出禁止、申し合いやぶつかり稽古の禁止など予防策を講じているが、なにせ集団生活が当然の世界だ。若い衆は大部屋住まい。相撲を取る稽古をしなくても普段から3密状態だ。ひとり出たら、クラスター化の恐れが付きまとう。外出禁止でも、ちゃんこの買い出しをしなければならない。親方やおかみさんをはじめ相撲部屋で暮らす者全員が外部との接触をゼロにするのは事実上、不可能と言っていい。5月場所(24日初日)まで1カ月弱の猶予があったとしても中止は避けられないだろう。

 感染した親方、力士らの健康状態も懸念される。米国の疾病対策センター(CDC)の見解では、「肥満患者は新型コロナウイルス感染後に重症化するリスクが高い」という。合併症を誘発するリスクも高まることに加え、肥満患者は気管への呼吸器具挿入が困難になるからだ。

 力士の体格は職業的に一般人よりも一回り、いや二回り以上も大きい――ありていに言えばデブが多い。WHO(世界保健機関)の定める肥満者とはBMI(体重キロ÷身長メートルの2乗)の数値が25を超える者を指す。例えば、カド番大関の貴景勝(体重169キロ、身長1.75メートル)のBMIは55.2。肥満の分類では4段階の中で最高クラスに入る。幕内の平均体重は、1月場所時点で162.6キロ。168センチ、99キロの小兵で知られる炎鵬ですら、BMIは35.1で4段階中、上から2番目だから、角界は肥満体だらけだ。

専門家の意見は

 ただし、力士は格闘家。ちまたのデブとは体の構造が違うのではないか。

 これまでに多くの力士を診断した経験を持つ、「栗原クリニック東京・日本橋」の栗原毅院長はこう語る。

「力士は毎日厳しい稽古をしていますから、やはり一般的な肥満の人とは全く異なります。CTを撮った時に驚きましたが、彼らは内臓脂肪が少なくて皮膚の下はほとんど筋肉なんです。力士は体形の割に糖尿病患者も少ないですし、もし糖尿病でも重症の方はほとんど見たことがないです」

 あれだけ大きな体をしていて、医療器具の装着に問題はないのか。

「医師側の技術も関係しますが、人工呼吸器の挿入は普通の肥満患者だと首の脂肪が多いのでできないこともあります。一方、力士の場合はやりにくいかもしれませんけど大丈夫なはずです。首回りのぜい肉は少ないし、ストレッチもしっかり行っているので柔軟性があります。また、力士はアスリートなので基礎体力は一般人よりも高い。さらに、たくさん食べてタンパク質も豊富に取っているはずですから免疫力も高いと思います。新型コロナで重症化する可能性が他より高いということは考えにくいです」

 御年53歳の高田川親方は、自らまわしを締め、稽古で現役力士に胸を出すこともある。屈強な体なくしてはできないだろう。白鷹山は糖尿病持ちで今後の経過が心配されるとはいえ、体のつくりも中身もただの肥満とは大違い。

 力士は“隠れマッチョ”だけに重症化の危険性が格段に高いとは言えそうもない。

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