大谷翔平は2度目のメスを入れて投手復帰できるのか…トミー・ジョン手術の権威に聞いた

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スイーパー多投の負担増

 ──今年は3月のWBCにも出場し、フル回転した。例年より体への負担が大きいのでは。

「もちろん、WBCの影響はあったかもしれません。しかし、WBCに出場していなくても、右肘を故障した可能性はあります」

 ──と、言いますと。

「疲労だけでなく、球種でもスライダー系のスイーパーという大きく横に曲がる変化球を多投していました。これで肘にかかる負担が大きくなっていたのかなと思います」

 ──フォークやスプリットは肘への負担が大きいといわれることが多い。

「実はフォークなどはあまり肘に負担はかからないのです。逆にスライダーやカットボールなど、手首を返すような動き、返さなくても手首の力が必要な球種は、肘の内側にある前腕の屈筋群に大きく負担がかかる。肘は骨と靱帯、そして靱帯をカバーする筋肉で構成されています。スイーパーなど筋肉に負担が大きい球種を多投すると筋疲労が蓄積し、靱帯を守る筋力が落ち、靱帯への負担も大きくなるのです」

 ──2度目のトミー・ジョン手術の可能性もありますが、メスを入れない再生、保存療法を目的としたPRP療法だけで復帰することは可能ですか?

「正確な負傷箇所はわかりませんが、前回の手術で移植した腱が傷ついていた場合、PRP療法は効きません。この療法はあくまで人間の治癒能力に由来したもの。ところが、一度移植した腱には血流も神経もないので、PRPによって移植した腱の中に血管は再生しません」

 ──大谷は2018年6月に右肘の靱帯を痛めてPRP療法を選択しましたが、同年9月に新たに靱帯の損傷が発覚し、トミー・ジョン手術に踏み切った。今回も再び靱帯を痛めました。今後、二刀流を続けることはできますか?

「手術がうまくいけばもちろん可能です。でも、150キロ台半ばから160キロ台前半の速球を投げること自体、並の投手より肘に負担がかかる。その上、スイーパーのような負担の大きいボールを多投するので、なおさら故障のリスクは高まります。大谷選手は前腕の筋肉が強いことは明白ですが、これまで以上に疲労を蓄積しないよう、これからは気を使わなければいけません。高校生もスライダー系をよく投げる子ほど肘を故障しやすいですが、そこはプロも同じです」

 ──2度目のトミー・ジョン手術をした場合、リハビリ期間は前回より長くなるとの見方が多い。前回はメジャー復帰まで投手は1年10カ月、打者は7カ月を要しました。

「同じ期間で復帰というのは、スケジュール的には可能だとは思います。ただ、2度目の手術になるので本人、球団、トレーナーが前回以上に慎重になるはず。その意味では復帰までの期間はより長くなる可能性はあります」

 ──トミー・ジョン手術は1度目の成功率が90%ほどある一方、2度目以降は50%に下がるといわれています。

「成功率が下がる理由はさまざまです。純粋に手術が難しくなるのもそうですが、2度目の手術を受ける選手の平均年齢が高いこととも無関係ではありません。2度目となると、今回の大谷選手のように前回手術から大体5年後が多い。勘違いしてほしくはないのですが、再び投手としてマウンドに立てるかどうかだけでいえば、5割どころか相当数の投手が復帰する。大事なのは手術する前と比べて遜色ない投球ができるかどうか。2Aや3Aでは通用するけどメジャーでは抑えられない、となれば手術の成功例には加えられない。大谷選手も再びメジャーで活躍できて初めて手術成功といえるのです」

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