猫の不思議がわかる本特集

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「ネコ学大図鑑」服部幸著、卵山玉子/マンガ・イラスト

 時にミステリアス、時にかわいらしく飼い主を翻弄する猫たち。一緒に暮らしていても日々発見があり、喜んだりビックリしたりしている飼い主も多いだろう。そこで、猫好きでも知って驚きの意外な生態や気持ちを徹底解説した最新ネコ本6冊をご紹介しよう。

 ◇ ◇ ◇

 暗闇の中でキラ~ンと光る目に驚いた経験のある飼い主は多いだろう。

 実は猫の目には人間の目にはない「タペタム」という反射層があり、これを使って効率よく光を集めているのだという。このように猫の目は暗い場所での暮らしに適した機能を備えており、例えば光の感度は人間の6倍以上で、動体視力も優れている。愛猫が“ごめん寝”するのはまぶしいから、またテレビはコマ送りのように見えているという説もあるほどだ。その一方で、静体視力はイマイチで視力も0・2~0・3と低め、色覚は青や黄色は認識するものの、赤は認識せず黒っぽく見えているだけらしい。

 猫は嗅覚も発達しているが、特に優れているのが嗅ぎ分ける能力。食べものの安全性や外敵など、においを嗅ぎ分けることで判断しているのだ。ただ鼻腔が小さくて空気を多く吸い込めないので、対象物に鼻をつけて嗅ぐ。

 ほかにも眠くなると鼻が乾く、猫の血液型は日本ではA型、イングランドではB型が多めなど、気になる猫のしぐさや行動の理由をイラストを多用しながら、猫の専門医が徹底解説する。 (宝島社 1000円+税)

「猫がゴロゴロよろこぶCDブック」高木佐保著、響介作曲

 最新の研究で「猫は耳で考える動物である」ことが証明されたという。非常に猫の聴覚は優れており、人の可聴域が20ヘルツから20キロヘルツなのに対して、猫のそれは48ヘルツから85キロヘルツにも及ぶ。人には聞こえない「超音波帯域の音」はもちろん、聞こえる音の高さに加え、「隣の部屋の虫の足音」のようなわずかな音も聞き逃さない。また猫の耳には20以上の筋肉がついており、左右それぞれに180度回転できるという驚きの技も。右耳で前からの音を、左耳で後ろからの音を聞くなんて猫にとっては朝飯前なのだ。

 ではそんな猫が好きな音は何なのか。いくつかの音を聞かせる実験では、次のような結果が。1位猫の鳴き声、2位8000ヘルツの音、3位水が湧き出る音、4位鳥の鳴き声、5位ビニールのガサゴソ音。最も人気がなかったのは人間の笑い声だったそう。

 とはいえ、猫は飼い主が楽しそうな表情をしているときに、リラックスした姿勢をとるなどポジティブな行動を見せることもわかっている。

 猫心理学者監修の「猫が癒やされる」CD付き。

 (サンマーク出版 1300円+税)

「家ねこ大全285」藤井康一著

 SNS上で人気ナンバーワンの現役獣医師が猫の本音から不調の原因まで285項目について解説。

「うちの猫は人の話がわかる」という飼い主がいるが、実際、猫は自分の名前がわかることが日本の科学者によって証明されている。また、名前だけでなく、例えば「待て」「ダメ」を理解させることも実は簡単。低く、短く、強い口調で言うと、低い声に猫に「怒られた」ことを認識させる効果があるという。

「ダメ!」と言っても聞かない、とすれば、飼い主の声に込められた「しょーがないなぁ」のニュアンスを猫は敏感に嗅ぎとっているからだ。

 猫が興奮して攻撃的になったときは「ダメ!」よりもレジ袋がおすすめ。ガサガサ音の正体探しに関心が向き、次第にクールダウンするそうだ。

 長引くステイホームで猫を飼いたいと思った人も多いだろうが、猫と暮らすメリットは多々ある。猫が家族になると子供の病気が減り、腸内細菌も増える、子供が悲しんでいるときは家族や友達よりペットと一緒にいるほうが落ち着くといった研究結果も。もし、お迎えしたら家族の一員として終生かわいがりたい。

 (KADOKAWA 1500円+税)

「ネコの博物図鑑」サラ・ブラウン著、角敦子訳

 成猫が人間に対し、愛着を示すようになるためには、2~7週齢の間に人に世話をされることが望ましいという。子猫のうちに人から世話される時間が1日当たり40分だった猫のほうが、15分だった猫より人懐っこくなる。野良猫の場合も、母猫が社会化されていれば、子猫も人との交流を好む土台ができる。

 遺伝子の観点から見ると、父猫の気質が子猫のその後の行動に影響を及ぼすことがわかっている。それは人に対する友好性・非友好性ではなく、「大胆さ」や「臆病さ」だそうだ。

 一方、猫は人間との暮らしの中で自分の要求をさまざまな手段でうまく伝える術を身に付けた。例えば猫は満足しているときにゴロゴロと喉を鳴らすが、食べ物をねだるときにゴロゴロ音に重ねてニャーと鳴く。すると人間にはかなり切羽詰まって聞こえるので、猫にとって望ましい反応を引き出す確率が高くなるのだ。

 今やブームでもある「猫」の進化、家畜化、行動、多様性など広範な観点から解明した完全ガイド。300にも及ぶ豊富な図版や写真と共に解説していく。

 (原書房 3200円+税)

「和猫のあしあと」岩﨑永治著

 落語家三遊亭円生のネタのひとつに「猫定」という演目がある。回向院(墨田区)に伝わる猫の恩返しが伝承のもとになっている。

 魚屋の利兵衛は両替商の時田に魚を売るたびに、そこにいるブチ猫に魚を与え、ずいぶんと懐かれていた。

 あるとき利兵衛が病に伏せり、銭がなくなり困っていると、誰ともなく金2両が家に置かれていた。やがて回復して時田の家を訪ねると、いつものように猫が出迎えない。聞くと「猫が金をくわえて逃げ出すことがあったので殺して捨てた」という。利兵衛が時田に金の入った包み紙を見せると時田の手跡だった――。

 回向院に葬られた猫は、現在、歴史を物語る猫塚として鼠小僧墓の横に立てられている。

 今戸神社(台東区)の井戸に身を投げた猫、自性院(新宿区)の太田道灌を救った黒猫など、江戸・東京に残る猫にまつわる29の話と猫伝承地を紹介。数々の伝承からは、人々が猫の理解しえぬ行動や神秘性に意味を探し、何とか理解しようとした痕跡が浮かび上がる。

 (緑書房 1800円+税)

「猫と東大。」東京大学広報室編

 現在、大学構内にいる猫は数匹程度。不妊治療をして戻すTNR活動の結果だが、駒場キャンパスにはかつて「駒猫」と呼ばれる猫がたくさんいたという。そのうちの1匹まみちゃんは、構内で15年以上暮らし、アイドル猫として愛されていた。亡くなったときには教授が「教養学部報」に追悼文を寄せ、終生、人間と付き合うことを楽しんだまみちゃんの様子を伝えている――。

 東大の広報誌「淡青」で大きな反響を呼んだ特集「猫号」を書籍化。文学、獣医学、歴史学、考古学、学内の美術品に至るまで猫に関わる学問・研究を紹介する。「インフルエンザウイルスの中間宿主としてニューヨークの猫が教えてくれたこと」や「AIM(腎臓の働きを改善する遺伝子)でネコの寿命が2倍に?」といったユニークなトピックスも。

 猫好き4教授の座談会では「愛猫がパソコンを落とし、学会直前の資料がぶっ飛んだ」「キーボードで爪とぎをする」などその被害をうれしそうに報告。キャンパス内の猫のほか飼い猫たちの写真も豊富で、猫に会いに東大を散策してみたくなる。

 (ミネルヴァ書房 2200円+税)

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