「人生が豊かに変わる 大人絵日記」あまがいしげこ氏

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 いつか絵を描いてみたい──。心の片隅にそんな気持ちがあっても、生活に追われてなかなか始められないという人は多い。そんな人に向けて、もっと気楽に始められる方法として「絵日記」を提案しているのが、本書だ。2001年からコツコツ描きためた自身の絵日記の一部を紹介しながら、描き方のヒントや日々の絵日記がもたらす効能についても解説している。

「私はスケッチするのが大好きなのですが、最初から大きなキャンバスに描くと失敗したときのダメージが大きいし、人目が気になったり、気に入らないところが目についたりして、手が止まっていました。でも自分しか見ない絵日記なら自分が楽しめばいいやと思えて自由になった。作品じゃなくて練習帳だと思うことで楽しく描けたんです」

■1日1マスのイラストからスタート

 絵日記といっても、学校の夏休みの宿題用ノートを使う「絵+文章」の定型の絵日記ではない。本書では、最初はマンスリータイプの手帳のカレンダーの1マスを使って1日1マス、イラストを描くことから始めることを推奨。毎日印象に残ったことを1マス分絵を描いて習慣化すれば、見返したときに思い出も蘇る。

「慣れたら、お気に入りのノートを使ってもう少し大きな絵を描きたくなると思います。絵日記といっても、長い文章を書く必要はなくて絵だけでも大丈夫。描いた魚が何の魚かわからないようなら、隣にイワシとメモしておけばイワシにしか見えなくなります(笑)。私の場合、日記を書こうとすると、反省文か決意文になってしまって絶対に人には見せられない。でも、絵日記だと気持ちのモヤモヤも解消できたし、なにより楽しく見返せます」

 最初はコーヒーカップひとつ思ったように描けず、写真を貼ってすませることもあったらしい。建築デザインを学んだ経験から立体物を作るための平面図を描くことには慣れていたものの、3次元の物を2次元に描くにはどうしたらいいかわからなくて大苦戦。しかしスケッチを続けるうち次第に絵が上達していくのがわかったという。好循環に気づいた著者は、この楽しさを知ってほしくて教室を開き教え始めた。

「会社と自宅の往復だけで、特に描くことはありませんという人もいらっしゃるのですが、そんな方には1日3つ良かったことや楽しかったことを見つけてみてと言っています。そうすると、生活が変わり、人生が楽しくなります。私の場合、絵日記を始めたら夫婦関係まで良くなったんですよ。夫が洗濯物をたたんでしまってくれたのがうれしくて、絵に描いてフェイスブックに投稿したら『ステキな旦那さんですね』という声が寄せられ、夫は進んで家事をやってくれるようになりました(笑)。これ、“あまがいマジック”って呼ばれています。ゲンダイ読者の方も奥さんにありがとうなんて言いにくくても、絵なら描けるかもしれないですよ」

 本書には色鉛筆で彩色した著者の絵日記がフルカラーで掲載されているほか、簡単なスケッチ方法や構図の設定の仕方などもわかりやすく紹介されている。本書を参考に新年から大人絵日記を始めてみては。

(大和出版 1650円)

▽あまがい・しげこ 1963年生まれ。筑波大学芸術専門学群建築デザイン卒。イラストレーター。1級建築士。対面での大人向けお絵かき講座も開催。コロナをきっかけに始めた、「旅の絵日記Web通信講座」には日本のみならず海外からも受講生が殺到中。

【連載】著者インタビュー

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