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「2023年 日本はこうなる」三菱UFJリサーチ&コンサルティング編

 急激なインフレに極東有事の懸念、そしてまだ続くコロナ禍の打撃……。果たしてニッポンの来年は?



 都銀系シンクタンクが最新トレンドを解説し、来年の世界と日本を予測する。

 アフターコロナ関連に始まり、SDGsやウクライナ情勢などにまつわる最新トレンドに注目。その後、第7章までにかけて合計73のキーワードを列挙しつつ、長いものでは8ページにわたって詳細に解説する。手軽なトレンドウオッチ本ながらも、本格的な知識を得るための充実した仕掛けになっているのがいい。

 ウクライナ危機に関連してはサプライチェーンリスク、特に資源リスクの急拡大を指摘する。これだけなら常識そのものだが、ウクライナ問題に隣接して対中経済安保に触れる。特にレアアースは中国への依存度が大きく、台湾有事などへの備えと考え合わせると、かなり厄介な問題になることがわかる。

 持続可能性への配慮と経済安保は表裏一体という指摘も鋭い。労働力のコストについては中ロの優位は依然として大きい。しかし、そこに持続可能性の観点を導入し、これを配慮した鉱物や製品とそうでないもので課税待遇を変えるといった施策をおこなうことでコスト問題の解決法が導けるというわけだ。

 仕事の合間の拾い読みができる形式なのもありがたい。

(東洋経済新報社 1980円)

「2023 これからの日本の論点」日本経済新聞社編

 日経の記者やコメンテーターらが内政から外交、経済、安全保障その他まで全22章をそれぞれ論じる来年のニッポン。

 たとえば「岸田首相が描く総裁再選への道」では同紙の編集委員が「永田町の弛緩した空気」を指摘する。野党がそろって弱体極まりないがゆえに「政権運営がもたついていようと、かなりやばい不祥事を起こそうと、自民党には、野党に転落する心配がまったくない」。この空気感で自民党内では必然的に派閥抗争が激化し、安倍派の分裂も必至とみる。

 株式相場については別の編集委員が「コロナ」「ウクライナ」「インフレ」の三重苦をしのぎ、円安を追い風として日本企業は底堅い堅調を見せるだろうと楽観的に予想する。

 他方、日経が近ごろ重視する軍事費の急増問題については、軍需産業をおもんぱかってか、あっさり無視するなど、財界寄りの姿勢も顕著だ。

(日本経済新聞出版 2200円)

「2025年 日本経済再生戦略」成毛眞、冨山和彦著

 景気の好不調にかかわらず、やり手経営者のご託宣はいつの世にもある。

 本書は元日本マイクロソフト社長と、「G型大学論争」で知られた経営コンサルタントが日本経済の「再生」を説く指南書。表紙を見ると対談形式のようだが、中身は各章を2人がそれぞれ手分けして担当している。

 見出しには「『経済危機でも倒産が少ない日本』は逆に危ない」「日本人富裕層向けの観光施設をつくれ」「日本は明治の伝統より、江戸時代のスタイルに立ち返れ」「最低でも2回、転職せよ」など、見た目だけで興味をそそる文言が並ぶ。

 要は旧習を捨てて大胆に変身せよというメッセージだ。

(SBクリエイティブ 990円)


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