「老父よ、帰れ」久坂部羊著
「老父よ、帰れ」久坂部羊著
45歳の好太郎は、認知症を発症して施設に預けている父親の茂一を自宅マンションに引き取り、介護を始める。
認知症の症状が出始めた当初、好太郎は先のことばかり心配して、症状の悪化を防ごうと脳トレや運動療法を無理強いしたが、結局、茂一の認知症は進み、さまざまなトラブルを起こし施設に入れてしまった。その反省から、今回は恩返しのつもりで、茂一に寄り添った介護をすると決心したのだ。
良好な介護を続ければ、もう一度自分の名前を呼んでくれるかもしれないという淡い期待もある。不安を口にする妻の泉を説得して、高校生の娘・千恵の了解も得て、好太郎は会社に介護休暇60日を申請。書斎を介護部屋にして、好太郎を迎え入れるが……。
医師でもある著者が、認知症介護のリアルを描いた長編小説。
(朝日新聞出版 858円)