赤塚不二夫<前編>「モテるけど…タモリにはかなわない」
僕はステテコの上下を着てタオルを頭に巻いた赤塚先生に聞いてみた。
「吉川と申します。初対面で恐縮ですが、先生、女性にモテるのではないでしょうか?」
先生の包み込むような雰囲気と普通じゃない優しさと人間くささがそう言わせたのか? 先生がニコッと笑って答える。
「そう、モテるモテないで言えば、まあまあモテる……でもねタモリにはかなわない。あいつはマメだから」
その赤塚邸には確かに目の覚めるような美女も散見されたが、シャイな赤塚さんはなかなか声をかけなかったように思う。タモリを発掘し養い、所ジョージを発見し、アルフィーの坂崎幸之助、ジャズの山下洋輔、坂田明、映画監督・山本晋也、コメディアン・書評家の内藤陳、歌手の三上寛、高見恭子、放送作家の高平哲郎、NHK演芸班の滝大作、たこ八郎、柄本明……そんな“面白グループ”と毎晩、新宿のひとみ寿司でキャベツを食べて酒を飲む。映画話で作品や俳優がわからなくなると週刊文春の表紙も書いているイラストレーターの和田誠邸に深夜何度も電話していたそうだ。