長年ライバルのビル・ゲイツとスティーブ・ジョブズ<後編>
アップルストアの日本第1号店、銀座店オープンに際し、こんなこともあったという。内部も外部も全く同じ建物をアメリカアップル本社近くにも作り毎日のようにジョブズは詳細に点検した。そして開店前日、金属扉の前で立ち止まった。「線のデザインが右上から左下になっているが、設計仕様では左上から右下である。これをやり直せないうちはアップルストア銀座店は開店しない」。スタッフは青ざめ、東京のスタッフを叩き起こし、奇跡的にジョブズの指令を開店前に果たせたという。
そんな2人が和解したのはジョブズが深刻な病に倒れた時だった。ゲイツはカリフォルニアのジョブズ宅を訪れ、こっそりキッチンの裏側に回り、ジョブズのお子さんに「お父さん元気? まだ会える?」と小さな声で聞いたという。サム古川氏は言う。
「普通、お互いにわがままな人間なら、『会いたくない』とか、いきなりドアを叩いて『会いに来たぞ』というふうにするのですが、お互いに家族を持ち、人とのコミュニケーションのスタイルも会社の経営のスタイルもすごく変わったのだと思います」
2人はこの時、最後の会話を交わしたといわれているが、長年のライバルはそこでどんな会話を交わしたのであろうか? もしお互いの存在がどちらか1人でも欠けていたら、今のコンピューター万能社会はここまで進化を遂げていないと私は思う。