「007」ダニエル・クレイグのボンド卒業作 これまでと明らかに違うことは?
現在、公開中の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、6代目ジェームズ・ボンドとなるダニエル・クレイグのボンド卒業作品としても話題を呼び、全国週末動員ランキング初登場第1位という大ヒットとなっています。
その理由としては、ボンド役のダニエル・クレイグが女性にも人気があることに加え、『007』自体が長年のシリーズファンでなくても、それぞれの俳優が演じたボンドシリーズだけでも楽しめるという認識が浸透したことで、1962年にスクリーンに登場した初代のショーン・コネリー(1~5作、7作)、2代目のジョージ・レーゼンビー(6作)、3代目のロジャー・ムーア(8~14作)、4代目のティモシー・ダルトン(15作、16作)5代目のピアース・ブロスナン(17~20作)というように、〇〇版ボンドとして気軽に見られるようになったことが要因ではないでしょうか。
「女性を本気で愛する」ダニエル・クレイグ版ボンドの魅力
特にダニエル・クレイグ版ボンドの第1作『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)は、007になる前の荒削りジェームズ・ボンドの物語として、007初心者と同じ目線で「00」という“殺しのライセンス”を持つ男の成長を見守ることになるので、新規のファンを多く取り込む結果を生みました。
しかもダニエル・ボンドはヴェスパーというひとりの女性を本気で愛した人間味溢れる男であると1作目で認識されたこともあり、その後、感情面でもドラマティックな展開を迎えていくことになります。
そこから物語は、『007/慰めの報酬』(2008)、『007/スカイフォール』(2012)と続き、4作目の『007/スペクター』(2015)ではマドレーヌという女性と再び本気の恋に落ち、そして今回の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で“愛と復讐の物語”が最終章を迎えるのです。
MeToo運動を経て、新世代の“ボンドウーマン”
さて、今作ではこれまでとは明らかに違う注目すべき点が2つあります。それは「ボンドガール」という呼び名から「ボンドウーマン」への変更、そしてシリーズ初の「00」=殺しのライセンスを持つ女性キャラクターの登場です。
そこは現在配信でも見られるドキュメンタリー「ジェームズ・ボンドとして」でも言及されていますが、世界的に広がったMeToo運動を意識して女性の活躍を増やすことを『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも心がけたと女性のプロデューサーであるバーバラ・ブロッコリが話しています。
■黒人女優のラシャーナ・リンチを起用
彼女は以前から『007』シリーズに関わっており、ピアース・ブロスナンやダニエル・クレイグといった女性に人気の俳優を起用した立役者と言えるのではないでしょうか。しかも本作で登場する「00」役には『キャプテン・マーベル』(2019)にも出演する黒人女優のラシャーナ・リンチを起用。彼女がボンドと肩を並べるほど有能なスパイであることが本作では描かれています。
これからは、女性でも「00」のコードネームを貰えるという英国紳士の代表格的な映画での改革。それでも男性ファンの思いも忘れずに、愛くるしい顔立ちが魅力の女優アナ・デ・アルマスがCIA新米女性エージェントに扮して登場。今回のボンドウーマンとして、胸元がざっくり開き、スリットの入ったセクシーなドレスで華麗なアクションを披露してくれるのが、往年の『007』ファンも満足させる要因になったのではないでしょうか。