なぜ「失敗」は繰り返されるのか…青年劇場「失敗の研究~ノモンハン1939~」は骨太の舞台
彼らの証言から、沢田は事件の背景に、東京・三宅坂の参謀本部と満州の関東軍、2つをつなぐ陸軍という組織の頂点に立つエリート集団が共有する特権意識と専横体質を感じ取る。そのことで、馬場は大義なき戦争を描くことに疑問を持ち、小説化を断念。沢田らは編集部に無断で取材を進めるのだが……。
2時間50分という長丁場だが、一瞬の緩みもない舞台。それを裏打ちするのが役者たちの説得力ある演技とセリフ術だ。とりわけ、沢田(作家の澤地久枝がモデルか)を演じた岡本の存在感が舞台を力強くリードした。
事件から85年、日本は再び軍拡に血道をあげ、新たな戦前の様相を呈している。だが、ノモンハンの作戦指揮の誤りはその後、ガダルカナル島で繰り返され、広島・長崎の原爆投下を招いた。東電福島原発事故という大惨事があったにもかかわらず、いまだに原発に固執するのも誤りを認めようとしないこの国の宿痾(しゅくあ)だ。
「ノモンハンは陸軍だけの失敗ではない。軍の専横を恐れた政治家、売らんがために戦争をあおった新聞社、それに乗っかった国民の熱狂があったからだ」と、部下を死なせたことで苦悩し続けた吉田中隊長(杉本光弘)の言葉が重くのしかかる。「帰還不能点」と同じく、「過去の失敗から学ぶことを諦めたら過ちを繰り返す」という作者・古川の問題提起を当代随一の演出家・鵜山仁が見事に血肉化した。
23日まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA。
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