放置でうつ症状も…老人の貧血には怖い病気が隠れている
「貧血は心不全を悪化させる原因ですが、心不全そのものも貧血を起こします。心臓の機能低下で腎血流量が減り、腎機能が悪くなると、赤血球を作るエリスロポエチンの産生異常が起こります。炎症性サイトカインも増えるので、これらが相まって貧血になると、心不全がさらに進むという悪循環に陥ります。実際、心不全患者の3分の1は貧血があるといわれます」
■肉は食べなきゃダメ
貧血の定義は世界保健機構(WHO)基準などで血液内のヘモグロビンの量が15歳以上の成人男性は13g/dl以下、妊婦を除く15歳以上の成人女性は12g/dl以下とされている。高齢者は11g/dl以下だが、65歳を過ぎると造血能力が急に低下することが知られる。
貧血にはさまざまな種類があるが、田中さんは高齢者の多くが患う鉄欠乏性貧血だった。その原因は消化管からの鉄吸収障害、薬による消化管出血などもあるが、食事での鉄分摂取不足も大きい。
田中さんは食が細く、十数年前の交通事故で腸が傷つき機能低下していたため、肉などは控えめにしていた。