著者のコラム一覧
青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

勉強熱心な医師が不在でも安心して入院できるのか

公開日: 更新日:

 医学分野における情報の更新はめまぐるしく、医療者は生涯学び続けなければなりません。医療者が最新の情報を学ぶ機会の代表的なものに「学術大会」があります。例えば日本には心臓病を専門に扱う循環器学会があり、1年に1回、全国レベルの学術大会が開催され、そこで研究成果など最新の情報が発表されます。

 最新情報を学ぶため、あるいは発表するために医師は学術大会に参加することがあります。すると、その期間中は勉強熱心な医師が病院にいない可能性があります。この期間に入院すると、そうした優秀な医師による医療を受けることができないかもしれません。

 米国医師会の内科専門誌(2015年2月号)に、循環器に関する学術大会開催中の期間と開催されていない期間を比較して、「心臓病で入院した患者の死亡リスク」を検討した論文が掲載されています。この研究では、「専門医が多く在籍している教育病院」と「専門医が少ない非教育病院」、また患者さんの状態を「高リスク」と「低リスク」に分けて、30日以内の死亡が解析されました。

 勉強熱心な医師が病院に不在である学術大会開催期間中の方が、死亡リスクが高いと思われるかもしれません。しかし、教育病院における高リスク患者では、心不全や心停止で入院した患者は学術大会開催中の方が死亡リスクが低いという結果でした。なお、非教育病院や低リスク患者では明確な差はありませんでした。

 すべての医師が学術大会に参加するわけではありませんし、勉強熱心な医師がいない方が死亡リスクが低いということではないと思います。この研究から言えるのは、学術大会開催中でも医療の質が低下することはないということかもしれません。

【連載】役に立つオモシロ医学論文

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ