勉強熱心な医師が不在でも安心して入院できるのか
医学分野における情報の更新はめまぐるしく、医療者は生涯学び続けなければなりません。医療者が最新の情報を学ぶ機会の代表的なものに「学術大会」があります。例えば日本には心臓病を専門に扱う循環器学会があり、1年に1回、全国レベルの学術大会が開催され、そこで研究成果など最新の情報が発表されます。
最新情報を学ぶため、あるいは発表するために医師は学術大会に参加することがあります。すると、その期間中は勉強熱心な医師が病院にいない可能性があります。この期間に入院すると、そうした優秀な医師による医療を受けることができないかもしれません。
米国医師会の内科専門誌(2015年2月号)に、循環器に関する学術大会開催中の期間と開催されていない期間を比較して、「心臓病で入院した患者の死亡リスク」を検討した論文が掲載されています。この研究では、「専門医が多く在籍している教育病院」と「専門医が少ない非教育病院」、また患者さんの状態を「高リスク」と「低リスク」に分けて、30日以内の死亡が解析されました。
勉強熱心な医師が病院に不在である学術大会開催期間中の方が、死亡リスクが高いと思われるかもしれません。しかし、教育病院における高リスク患者では、心不全や心停止で入院した患者は学術大会開催中の方が死亡リスクが低いという結果でした。なお、非教育病院や低リスク患者では明確な差はありませんでした。
すべての医師が学術大会に参加するわけではありませんし、勉強熱心な医師がいない方が死亡リスクが低いということではないと思います。この研究から言えるのは、学術大会開催中でも医療の質が低下することはないということかもしれません。