分子標的薬の登場が慢性骨髄性白血病の治療を劇的に変えた
骨髄移植は超大量の抗がん剤と全身放射線治療を行い、白血球数がゼロになり無菌室で他人の骨髄が定着するまでの約1カ月間、患者は我慢の日々を過ごします。それが成功しても、多くはGVHD(移植片対宿主病)で皮疹、下痢、肝機能障害などに悩まされました。
しかし2001年、分子標的薬「イマチニブ」の登場が治療法を劇的に変えました。薬を内服するだけで骨髄移植以上の効果が得られたのです。今日まで、慢性期の場合、この薬での8年全生存は85%、しかも白血病関連死は少ないといわれています。また、この薬が効かなくなった場合でも他の薬剤があるのです。
ただ、白血病が遺伝子レベルでも異常を認めない状態になっても、この高価な薬をいつまで飲めばいいのかが分かっていません。良い状態が続いていて治療を中止する試験が海外でも国内でも行われています。現状では、もし治療を中止する場合は担当医との十分な検討・相談が必要です。
慢性骨髄性白血病は、薬によるがんの治療法では最も進歩したもののひとつです。あの時、K君は、実はすべてを知っていて、真実を話し合いたかったのではないか? そして、わずかでもアドバイスを求めていたのではないか? 何十年経っても悔やむ気持ちが残っています。私の脳裏のK君は、若いままでほほ笑んでいるのです。