最期まで自分らしく生きる がんの緩和的放射線療法とは
一方、緩和的放射線治療とはがんを治すのが目的ではなく、痛みや苦しみをとる治療法だ。骨転移での痛みの除去、脳転移によるふらつきや意識障害を取り除くことが目的になる。
「放射線治療には、がんの根治や再発・転移のリスクを軽減するために照射する以外に神経への圧迫を取り除いて症状を和らげる緩和照射があります。根治目的の照射と違って線量を下げて行われるので高齢者や体力のない人でも受けられるのがメリットです」
■骨の痛みがとれたり、顔の腫れが引く
50代の女性は卵巣がんの手術を受けたものの、がんが肺や骨盤、肝臓に転移。抗がん剤も思ったような効果を得られず、徐々に腹膜播種による骨盤腫瘍が大きくなった。やがて尿管を圧迫して水腎症と呼ばれる状態となり、腰痛も訴えるようになったという。
「この患者さんは放射線治療をしている最中に痛みが減っていき、7カ月後のCTでは照射された骨盤の腫瘍はすっかり消えていました。また水腎症も消えていました。残念ながらその後、脳や肝臓に転移が見つかりましたが、そのたびに放射線治療を行い、がんとの共生を図っています。がんが進行していくと、貧血が進みますが、ほかの病院ではあまりない放射線治療科病棟があるので、適切な処置を施すことができます」