認知症の人にも効果あり「歯科VR」のメリット&デメリット
ちなみに、BiPSEEでは一般的な3DVRでなく、2Dを使用しているという。
「日本では、3D映像を用いたVRの視聴について、幼い子供の視覚への影響を懸念する声があります。そのことに配慮したものです。一方、欧米のガイドラインでは眼科的な疾患(遠視や斜視など)の既往がある子供以外には3D映像の視聴に制限がありません。今後、科学的な知見を重ね、納得感を醸成しながら、3D映像の採用も検討します」(松村氏)
視点を次々と移動させるVRは目の疲労感が少なく、むしろ視力の改善効果をもたらす可能性があるとの研究もある。中国の民間研究機関がVRお絵描きソフトを使い、視覚への影響を調べた結果だ。その結果は長期間かけて慎重に分析する必要があるが、少なくとも歯科治療程度の短時間の使用なら問題ないと考えてよさそうだ。
難点はVRゴーグルの装着自体が困難な場合があること。
「“この方なら大丈夫だろう”と思った患者さんを対象に勧めたのですが、嫌がられて装着できなかったケースもあります。許容範囲ではありますが、患者さんが装着したゴーグルが治療する際、邪魔になるケースもありました。一段のゴーグルの小型化が必要かもしれません」(田中歯科医師)
健康の基本は歯。歯科治療弱者の子供や知的能力障害者、認知症患者に有効な歯科VRは、医療費削減の一助になるのではないか。