認知症でがんになったら治療で命を延ばす意味はないのか
「Aさんのような場合、家族にしてみれば、悩んでしまって『それでもやっぱり長く生きていて欲しい。治療して欲しい』となる場合が多いのです。自分で判断できるうちに本人が書いた『治療しない』との書面があれば、問題なく家族も医療者も治療しないことに納得できるのです」
K医師はそこまで聞いて、失礼とは思いつつも「ありがとう」と言って電話を切りました。そして、こんな憤りを感じたそうです。
「自分はN医師からそんな事を聞くつもりで電話したのではない。安全な治療のやり方を聞いたのだ。認知症になったら、命を永らえる治療は意味がない? 認知症患者は長く生きている意味がないっていうのか? 俺は若い時に、N医師にそんな指導はしなかったはずだ。命の大切さをたくさん教えたはずだ。『命の価値観を考えて』ってなんなんだ? 腫瘍内科医はそんなことを考えているのか? 認知症の患者には、がん治療はしないのか?」
■生きている価値がないと考えるのは論外
しばらくすると、今度はN医師から電話がかかってきました。