「臭覚検査」をきちんと受けるべき理由 鼻と嗅覚と記憶障害
人は約400種類の嗅覚受容体を持つ。鼻から空気を吸い込むと、鼻腔の天井部分(鼻腔天蓋)にある嗅上皮と呼ばれる特別な粘膜に匂いの分子が溶け込む。すると嗅細胞が匂いの濃度などに応じた電気信号を発生させ、その電気信号が嗅神経、嗅球、大脳辺縁系(本能や情動をつかさどる)にある海馬に直接的に伝わる。
「嗅覚情報は他の五感と違って直接的に海馬に届けられるために記憶と結びつきやすいといわれています。そのため匂いの喪失は脳機能を低下させ、記憶力を衰えさせることにつながる可能性があるのです。実際、記憶障害であるアルツハイマー型認知症も初期段階で匂いが感じられなくなることが報告されています」
子供はアデノイド手術で鼻づまりが解消すると集中力が高まり勉強ができるようになるといわれる。酸素が楽に吸えるようになりストレスが軽減することも理由だろうが、五感のうちのひとつ、嗅覚機能が正常化することも一因かもしれないのだ。
匂いの喪失は記憶や集中力の喪失だけにとどまらない。命を危険にさらすことでもある。
「匂いが感じられなくなると食事の楽しみが減るだけでなく、腐りかけの食べ物やガス漏れ、コンロの火の消し忘れなどに気付かずに危険な思いをすることにもなりかねません」