手術が年明けに…患者は年末年始をどんな気持ちで過ごすのか
宗教とはまったく関係ない病院でも、一時的だとはいえ多くの入院患者は「心の安らぎ」を得られたのだと思います。
正月になると、歩ける患者の多くは外泊されました。気になるのは、正月も家に帰れない患者の気持ちです。大部屋でひとり、周囲のベッドが空いている状況で過ごすのです。
ただ、中には華やかな和服を着た娘さんが、家に帰れない父親に披露しに来ることもありました。重症患者の治療で毎日病院に来ている私は、外泊できないでいる患者と新年のあいさつをしたり、冗談を言い合ったりしました。
いまほど医学が進んでいないあの時代、それでも看護師と一緒に患者の「心」を一生懸命に考えました。医療が進歩したいまは助かるがん患者も多くなりました。しかし、まだまだがんで亡くなる方は少なくないのです。
しかも、大病院では入院日数が短くなり、治療が難しくなった患者でも、たとえひとり暮らしでも、在宅療養を勧められることがあるようです。急変の時は病院が受け入れてくれますが、正月には「ひとり暮らしされているがん患者の心と体は大丈夫か……」と気になるのです。