さっぱりしたものに合う柚子胡椒には疲労回復効果が
箸でつまめる「和風のラー油」抗菌、抗酸化作用
柚子胡椒とは、柚子と胡椒をまぜたもの、ではない。この場合の胡椒とは、唐辛子のこと。唐辛子の辛味成分カプサイシンが大量に含まれている。だから柚子胡椒はピリリと辛い。柚子の皮を薄くむき、細かくみじん切りにしたものと、種を取った青唐辛子をみじん切りにしたものをすり鉢ですり潰す。ここに塩と柚子の果汁を加えて味を調える。これが柚子胡椒。
柚子の皮をよく見るとブツブツがたくさんちらばっていることがわかる。これは精油をたくわえている油滴。柑橘系のアロマ成分や色素成分をたっぷり含む。アロマ成分の代表はリモネン。レモンのよい香りがするとともに抗菌作用がある。また色素成分はオレンジ色のカロテンがある。カロテンは抗酸化作用の他に、動物にとってはビタミンAの原料にもなる重要物質。なので柑橘類は皮にこそ栄養があるといえる。その意味で、柚子の皮を大切に使った柚子胡椒は立派な健康食品。精油とカプサイシンをまぜたものなので和風のラー油と呼んでもよい。ラー油と違ってお箸でちょっとつまめるので、焼き鳥や刺し身の薬味に最適。今回のレシピのように白身の刺し身のドレッシングや豚肉料理にも使える。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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