青島周一
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青島周一勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

伝統的な日本食には認知機能の低下を予防する効果が? 栄養学の専門誌に論文掲載

公開日: 更新日:

 バランスのよい食習慣は健康の維持にとって重要だと考えられています。とりわけ、地中海食と呼ばれる地中海沿岸地域の伝統料理は、健康増進に関するエビデンス(科学的根拠)が豊富です。高齢者を対象とした研究では、地中海食を積極的に摂取している人で、脳の容積が大きく、萎縮(細胞数が減少して体積が小さくなる)しにくい可能性が報告されていました。

 そんな中、日本人の食事パターンと脳の萎縮との関連性を検討した研究論文が、栄養学の専門誌に2024年3月12日付で公開されました。

 この研究では、愛知県に在住している40歳以上の1636人(男性815人)が対象となりました。研究参加者の食習慣を調査し、伝統的な日本食、西洋食、野菜・果物・乳製品(もしくは穀物)を中心とした食事の3パターンに分類しています。また、磁気共鳴画像法(MRI)検査を行い、脳の萎縮率を調査し、食事パターンとの関連性が検討されました。なお、研究結果に影響し得る年齢、生活習慣、カロリー摂取量などの因子について、統計学的に補正して解析されました。

 平均で2年にわたる追跡調査の結果、灰白質(脳の神経細胞が集まっている領域)の年間萎縮率は、西洋食を摂取していた女性で0.299%だったのに対して、日本食では0.258%でした。統計解析の結果、日本食を摂取している女性では、灰白質の萎縮率が低いことと関連していました。一方、男性では、食事の摂取パターンと脳の萎縮に明確な関連性を認めませんでした。

 論文著者らは、「日本食の摂取は、女性で脳の萎縮を予防する効果があるかもしれない」としつつも、「男性では食事の摂取パターンと脳の萎縮に関連性を認めず、より長期にわたる追跡調査が必要」と結論しています。

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