花粉との兼ね合いで困る尿漏れは1000万人が苦しむ…対策は
高血圧の人は利尿薬に注意
前立腺肥大症や膀胱結石、膀胱炎などの泌尿器科の病気のほか、脳と膀胱を結ぶ神経トラブルなどでも過活動膀胱になりうる。幅広い原因の中に持病の薬の影響も少なからずある。そのひとつが、高血圧だ。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器専門医)が言う。
「血圧を下げる薬のひとつに利尿薬があります。体内の水分を排出して血圧を下げる仕組みですから、排尿が多くなります。それで排尿障害がつらい方は、たとえばカルシウム拮抗薬などに変更することで症状が改善する可能性があります」
利尿薬は、1日1回朝に服用するのがほとんどだ。薬がよく効いているのは日中で、「朝食をとってから昼すぎくらいまでトイレが近いが、夜になると落ち着いてくる」というのが利尿薬による頻尿の特徴だ。おくすり手帳などを見て利尿薬を服用している人は、かかりつけ医に相談して薬を変えてもらうといいだろう。
■抗コリン成分による口の渇きは唾液腺マッサージで
過活動膀胱の原因のひとつに、神経伝達物質アセチルコリンの過剰分泌がある。それを抑えるのが抗コリン薬だが、薬を飲んでもよくならないケースがある。
医薬情報研究所エス・アイ・シーの堀美智子氏(薬剤師)が言う。
「抗コリン作用を持つ薬は過活動膀胱治療薬のほか、胃薬、抗ヒスタミン薬、パーキンソン病治療薬など幅広く含まれています。薬効成分が重複しやすい上、高齢で代謝が衰えたり、腎機能が低下していたりすると、体内に長くとどまり、副作用が出やすい。抗コリン薬の副作用のひとつが口の渇き。それで、何度も水を飲むと、頻尿が改善されず、『薬を飲んでもよくならない』ということが起こるのです」
今の時季なら花粉症の薬も服用するだろう。それと過活動膀胱の薬を併用する可能性は十分。睡眠薬や抗不安薬に頼る高齢者は珍しくない。それで抗コリン成分が重複し口が渇くのだが、渇きを覚えるだけで体内の水分量が減っているわけではない。水分補給の必要はなく、耳の下から顎の下を指で押して唾液腺をマッサージしたり、うがいをしたりして口を潤せばいいという。
抗コリン成分を含む薬剤は、厚労省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」にもリストアップされている。それをまとめたのが、〈表〉だ。リストアップされた薬を服用している人は、かかりつけ医と薬剤師に相談するのが無難だろう。
いつも元気な妻がこの時季に限って外出を嫌うのは花粉より尿漏れを警戒しているのかもしれないだろう。それに気づかず無理強いすると、夫婦関係にヒビが入る。いっそ夫婦で薬を見直してみるのもよさそうだ。