鶏肉は余分な脂を取り除いて老化防止
疲労回復、抗酸化作用を持つ特殊成分
農林水産省の資料には次のように書かれている。
“畜産物1キロの生産には、その何倍もの飼料穀物を家畜に与える必要があることから、畜産物消費量が増加すると、急激に穀物需要が増加します”
ちなみに、畜産物1キロの生産に必要な穀物量(トウモロコシ換算)は、牛肉で11キロ、豚肉で7キロ、鶏肉で4キロになる。肉(タンパク質)と穀物(炭水化物)の重さ当たりのカロリーは同じなので、牛肉1キロを食べるのはトウモロコシ11キロを食べるのと等価であり、エネルギー効率から見て、とても無駄が多い。
もし将来、食糧不足になったら、肉など食べることは許されず、人間もトウモロコシを食べて飢えをしのぐ時代が来るのは必定である。つまり肉食はとてつもないぜいたく行為なのだ。肉のうちでも鶏肉はエネルギー効率からいって優等生。牛の約3分の1の餌で同じ量の肉になる。そして、栄養面からいっても優等生である。まず、なんといっても脂が少ない。
鶏の胸肉は、鳥が羽ばたくためのムキムキな筋肉であり、ここにはイミダゾールジペプチドという特殊な成分が含まれている。イミダゾールジペプチドは、もともと渡り鳥が長時間、羽ばたくために用意されている物質で、乳酸の分解促進による疲労回復作用、活性酸素を抑える抗酸化作用を持つことが示されている。ぜいたくとはいっても肉はやっぱりおいしい。せめて、食べられるうちに味わっておきたい。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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