豊富な栄養と春の薫りをいただく グリーンピース下処理と茹で方

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メンデルの法則を生み出した免疫システムの重要素材

 子供の頃、なぜか私はグリーンピースが苦手で、チャーハンやピラフに入っているのをいちいちつまみ出して捨てていた。プラスチックみたいな人工的に見える緑色と、あまり味のない食感が嫌だったのだろう。今にして思えば、たいへん罪なことである。なんせグリーンピースは生物学者にとってリスペクトしてもしすぎることのない最重要の実験材料だったからである。

 ちょうど日本でいうと明治維新が始まる少し前、オーストリアの修道院の司祭グレゴール・メンデルは、エンドウマメ、すなわちグリーンピースを使って実験をしていた。豆にシワのある系統とない系統をかけ合わせるとシワのないものができる。これを自家受粉すると次の世代ではシワのないものとあるものが3:1で出現する。有名なメンデルの法則である。遺伝が何らかの物質的な媒体(今で言う遺伝子)によって運ばれ、また優性と劣性(正式には顕性と潜性)の組み合わせによって数学的な法則が成り立つ。

 しかしこの先進的な研究は認められることなく、メンデルは失意のうちに死んだ。メンデルの研究が評価されたのは20世紀になってから。一方、メンデルは実験結果が自分の数学的モデルに合うよう、データを少しお化粧(悪く言えば捏造)していた疑いも持たれている。

 さて、食材としてのグリーンピースは、やや脇役的ではあるが栄養成分的には主役級である。

 まず良質のタンパク質を含む。タンパク質は、免疫システムの重要素材、抗体(免疫グロブリン)の原料となる。また小ぶりながら食物繊維も豊富。食物繊維は整腸作用とともに悪玉腸内細菌の排出にも一役買う。コロナ禍は一向に終息が見えないが、しっかり栄養を取って体調を維持したい。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。


▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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