脳梗塞を予防する「左心耳」への処置が保険適用になった
今年4月、これまでわれわれが積み重ねてきた努力がひとつ実りました。心原性脳梗塞を予防するために心臓の左心耳を処置する「左心耳閉鎖術」が保険適用になったのです。
左心耳とは、心臓の左心房の上部にある袋状に突起した部分です。心臓が細かく不規則に収縮を繰り返す心房細動が起こると、ここの血流が悪くなるため、血栓ができやすくなります。その血栓が移動して脳の血管で詰まると、脳梗塞が起こるのです。
しかも、こうした心原性脳梗塞は片麻痺や言語障害が残りやすく、生活支援も必要になると寿命にも影響してくることが知られています。
心臓の手術を受けた患者さんは、どんなに手術がうまくいったとしても、術後に脳梗塞を起こすリスクがアップします。回復する過程で、縫い合わせた部分がどうしても癒着を起こして全体的な心機能が低下するので、左心耳も含めた心臓内で血液によどみができて血栓が形成されやすくなるからです。
術後の心原性脳梗塞を予防するには、かつては血液を固まりにくくする抗凝固剤を服用するしか手段はなく、ずっと薬を飲み続けなければならない患者さんの負担は大きなものでした。また、薬で人工的に血液をサラサラにすると血が止まりにくくなるため、患者さんに胃潰瘍からの出血や交通外傷による内出血など、出血に関するアクシデントがあった時には重篤な状態になってしまうリスクが高いといえます。