保健適用が拡大された「陽子線治療」の実力 効果が高く副作用が少ない
膵がんの場合、手術でがんを切除できるなら、その方が生存率が延びるとされている。
「膵臓は胃の裏側に位置していて、十二指腸などの消化管が近い場所にあります。それらの消化管に高線量の陽子線を照射すると、潰瘍ができたり臓器に穴が開いてしまうリスクがあるため、線量を控えなければなりません。そのため手術でがんを切除できるなら、そちらを選択した方がよいとされています。当初は手術できないとされた患者さんが陽子線治療を受けた後にがんが縮小したことで、手術を受けられるようになったケースもあります。ただし、手術できなくても、陽子線治療により5年以上生存する膵がんの患者さんが何人もいらっしゃいます。画期的な成果です」
肝臓がんは手術ではなく、陽子線治療で十分に回復が見込めるという。
「今回、肝臓がんは4センチ以上のものが保険適用になりました。がんの大きさが7センチや10センチあって手術できない患者さんが含まれているグループで、腫瘍に栄養を送る血管を塞ぐ塞栓療法と比較し、陽子線治療の方が予後が良いことが示され保険適用が認められたのです。4センチ未満の小さな肝臓がんに対しては、いまは先進医療として陽子線治療を実施していますが、成績について手術との比較が行われています。その結果から、われわれ陽子線治療を行っている医師の多くは、肝臓がんに手術は必要ないと考えています」