末期がん患者を自宅で療養する4つのポイント 在宅診療の名医が解説
医療・介護はチームで選ぶ
3つ目は、家族や本人の「精神的な不安感」に寄り添える環境づくりが不可欠です。がん末期では、医療職、介護職の言葉ひとつ、行動ひとつで患者やその家族の精神面に影響が出ます。そのため、緊密な意思疎通が大切です。夜間や休日にバイトドクターを使っている医療機関や24時間体制が取れない訪問看護、土日に連絡がつかない訪問薬局などでは、それが十分ではありません。
日々変化する本人や家族の気持ちや精神状態に寄り添ってもらうためには、主治医が固定され、すべての職種の24時間体制が取られており、言葉遣いや発するタイミングを選んでもらえる医療介護の「チーム」を選ぶことが大切です。不安な気持ちに対して、カウンセリングなどのサポートが可能な心療内科や精神科もうたう訪問診療事業所は心強い、と思います。
4つ目は、「生きがい」「家族の価値観」を大切にできる環境づくりです。末期がんでも、難病の方でも患者さんは誰もが人生は一回で、最期の時間まで大切にしたいと感じています。家族もその貴重な時間を介護というストレスを感じるだけではなく、「幸せな時間」という気持ちに転換できることが望ましい。そのためにはいくら技術的に素晴らしい医療人材でも“相性”が悪いと感じたら、すぐに違う医療機関や訪問看護を選び直すことが大事です。
そして、痛みや苦しみを最期に近い時間までしっかりと取ってあげることで、旅行や車椅子での近くの散歩などをしながら、写真撮影など思い出づくりをすることが大切です。それは、患者本人のためだけではなく、残された家族のためでもあるのです。
(しろひげ在宅診療所・山中光茂院長)