「疲れたから」と部屋にこもりがちの老親に笑顔が戻った
脳の健康を考える時、「意・情・知」が大切だと、前回述べました。「意」は意欲、「情」は感情、「知」は知能になります。人間の精神活動の基本として、土台が「意」になり、その上に「情」、一番上に「知」が乗っています。
認知症の母親を介護する男性からこんな話を聞いたことがあります。
「母親に『散歩とか、なんでもいいから体を動かした方がいいよ』と言っても、やろうとしない」
男性の母親は、認知症と診断されるずいぶん前から部屋にひきこもりがちになり、そのうち明らかに認知症を疑う症状が出始めたそうです。
脳の老化現象として最初に起こるのは、脳の司令塔である前頭葉の萎縮です。年を取れば病気をしていなくてもさまざまなところが老いていくように、認知症でなくても、正常な老化現象として前頭葉は萎縮していきます。
前頭葉は意欲に関係していますから、前頭葉の萎縮によって、いろんなことが面倒になり、やる気が起こらなくなってくる。意欲がなければ、感情は動きませんし、知能を使う活動にも至りません。