中川恵一
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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

歌手・水木一郎さんが他界…肺がんの脳転移は放射線と薬の順番で予後が変わる

公開日: 更新日:

 歌手・水木一郎さんの命を奪ったのは、肺がんでした。享年74。先月27日にライブでステージに上がってから9日後の訃報でした。肺がんは罹患数2位、死亡数1位で、日本人に多いがんですから、人ごとではありません。

 報道などによると、昨年4月に見つかった肺がんを今年7月に公表したときは、脳とリンパ節に転移し、髄膜播種を起こしていたといいます。がん判明から2年もたたないうちの悲報となったのは髄膜播種の影響が大きかったでしょう。

 髄膜は、頭蓋骨と脳の間にあって、脳を保護している膜です。その膜の中では、脳の内部でつくられた脊髄液が循環していて、脳の表面で吸収されます。

 その脊髄液に転移したがんが散らばった状態が髄膜播種。実は、脊髄液の循環がポイントで、がん細胞がこの流れに乗って、脳のあちこちで脳神経障害を起こす恐れがあるから厄介です。髄膜は脊髄にのびていて、それによって脊髄液の循環も脊髄に達するため、障害の広がりが、脊髄や末梢神経に及ぶこともあります。

 この病態のため髄膜播種の予後はとても悪い。無治療だと、その生存期間中央値は4~6週間。治療例で2~3カ月とされます。

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