認知症の初期症状で「嗅覚障害」が起こるのはなぜか?

公開日: 更新日:

 たとえば、アルツハイマー型認知症の患者さんは、「アミロイドβ」や「タウタンパク質」といった特殊なタンパク質が脳に沈着しています。初期段階では、とくにアミロイドβが短期記憶をつかさどる海馬から順にたまっていき、脳を萎縮させます。認知症の方が最初に新しいことが覚えられなくなるのはそのためですが、同時に脳が萎縮することで「アセチルコリン」などの神経伝達物質が減少します。アセチルコリンは嗅覚と密接に関わっていて、嗅神経の障害が引き起こされるため、記憶力の低下とともに嗅覚障害も起こっているのです。

 もちろん、嗅覚障害の原因は認知症だけでなく、アレルギー性鼻炎、近年は新型コロナウイルスなどさまざまです。認知症に伴う嗅覚障害かどうかを見分けるには、「長年にわたって徐々ににおいを感じなくなっているかどうか」をチェックします。アレルギーのように急に発生したり、悪化と回復を繰り返すものは該当しません。

 40代、50代までグルメだった人が、60歳前後から大きな理由もなく食に興味がなくなったり、若い頃に比べてかなり食欲が落ちたという方で、記憶力の低下などの症状もあれば、主治医に相談してみるとよいでしょう。認知症の初期症状として嗅覚が低下したことで、味覚も落ちて食への関心が薄れた可能性も考えられるからです。

▽安成英輔(やすなり・えいすけ) 白金高輪駅前内科・糖尿病クリニック院長。岩手医科大学医学部卒業。順天堂大学医学部付属順天堂医院(内科・代謝内分泌内科)勤務などを経て、現職。日本糖尿病学会専門医、難病指定医、日本内科学会認定内科医など。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人のW懸案「ポスト岡本和真&坂本勇人」を一気に解決する2つの原石 ともにパワーは超メジャー級

  2. 2

    反撃の中居正広氏に「まずやるべきこと」を指摘し共感呼ぶ…発信者の鈴木エイト氏に聞いた

  3. 3

    松本潤、櫻井翔、相葉雅紀が7月期ドラマに揃って登場「嵐」解散ライブの勢い借りて視聴率上積みへ

  4. 4

    遠山景織子 元光GENJI山本淳一との入籍・出産騒動と破局

  5. 5

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  1. 6

    だから高市早苗は嫌われる…石破自民に「減税しないのはアホ」と皮肉批判で“後ろから撃つ女”の本領発揮

  2. 7

    中居正広氏vsフジテレビは法廷闘争で当事者が対峙の可能性も…紀藤正樹弁護士に聞いた

  3. 8

    ユニクロ女子陸上競技部の要職に就任 青学大・原晋監督が日刊ゲンダイに語った「野望」

  4. 9

    吉岡里帆&小芝風花の電撃移籍で様変わりした芸能プロ事情…若手女優を引きつける“お金”以外の魅力

  5. 10

    佐々木朗希が患う「インピンジメント症候群」とは? 専門家は手術の可能性にまで言及