【ウエストナイルウイルス感染症】似たウイルスの抗体を利用した薬の研究が進んでいる
「ウエストナイル熱」や「ウエストナイル脳炎」という病名を聞いたことがあるでしょうか? ウエストナイル熱は、インフルエンザのような症状が表れる比較的軽症の病気です。ほとんどの患者さんは数日から1週間以内で回復します。その原因となるウイルスが脳に感染し、さらに重篤な状態がウエストナイル脳炎です。いずれも、ウエストナイルウイルスが原因で起こる疾患です。
ウエストナイルウイルスはフラビウイルス属のウイルスで、日本脳炎ウイルスやデングウイルスの仲間です。日本脳炎と同様に蚊が媒介して、ヒトのほか、トリ、ウマなどの動物への感染がわかっています。
ほとんどの人(約80%)は無症状なのですが、感染した人のうち2割程度がウエストナイル熱を発症すると考えられており、発熱、頭痛、筋肉痛、時に発疹やリンパ節の腫れが見られますが、症状は軽度です。ウエストナイル脳炎になって重症化すると、激しい頭痛、意識障害、痙攣、筋力低下、麻痺などを示し、まれに後遺症が残るケースもあります。
サル痘を取り上げた前回、同系統のウイルスに免疫を持つことができれば、似ている別のウイルス疾患にも有効であるという「交差免疫」についてお話ししました。ウエストナイルウイルスにおいても、よく似ている日本脳炎ウイルスのワクチンを接種した人から得られる抗体を応用して治療に利用できるのか、研究されています。ただ、現時点では有効なワクチンや特効薬はまだありません。
アフリカ、中近東、欧州、米州では過去に何度か流行していますが、いまのところ日本では流行したことはありません。ですから、これらの国を訪れる場合には、長袖、長ズボンを着用するなどして蚊に刺されないようにする対策が重要です。