20年ぶりに手術での「縫い方」を変更した理由 変革は常に必要
ただ、執刀医が手術中に助手に依存しすぎてしまうと、完成度が自分の理想よりも低くなってしまうケースがあります。
今回の場合、サポートしてくれている助手とのコンビネーションがいまひとつ噛み合わないことがあり、処置の最中に糸が切れるなどの操作ミスが何度か起こりました。
もちろん、患者さんに不利益は一切ありませんし、手術自体に問題が生じるようなミスではありません。ただ、これまで当たり前のようにずっと繰り返してきた処置で問題が発生したのです。これは、周囲のスタッフとの調和がとれていないのだろう──そう考え、助手に頼ることなく、ひとりでやりやすい縫い方にチェンジすることを決めました。
また、近年は難しい手術が増えているのも変更した理由のひとつです。患者さんが全体的に高齢化していることで、血管の太さやもろさを含めた全身の状態が悪い場合が多くなっています。
心臓に病気がある場合はまず循環器内科でステントを入れるなどの内科的な治療が選択されるケースが増えているため、外科手術を受ける段階の患者さんは、かなり状態が悪化しています。その場合、手術で実施する処置がかなり制限されるので、執刀医とスタッフの連携がスムーズにいかないことも起こりやすくなっています。ですから、助手に依存しすぎないような縫い方が必要でした。