20年ぶりに手術での「縫い方」を変更した理由 変革は常に必要
これまで何度もお話ししてきたように、近年の心臓手術は患者さんの負担をより小さくする「低侵襲化」の方向に進んでいます。
新しく開発された医療機器を使用する治療法もありますが、低侵襲化のベースになっているものの多くは従来の手術です。
たとえば、狭心症などに対する冠動脈バイパス手術、心臓弁膜症に対する弁置換術などは、どう処置すれば心機能がきちんと回復するのかについてのエビデンス(科学的根拠)が積み上がっていて、基本的には完成された手術といえます。そうした手術の内容を変えないまま、より患者さんの負担が少ない形で実施できるような方法──たとえば切開する部分をできる限り小さくする術式などを進化させているのです。
私も4年ほど前から「MICS(ミックス)」と呼ばれる小切開手術に取り組んでいますが、同時にこれまで行ってきた外科手術の完成度をより高めるために試行錯誤を重ねています。
心臓手術は執刀する外科医によって「完成度」が大きく違ってきます。たとえば、同じ食材を使ったとしても、おいしい料理を提供できる料理人と、それほどでもない料理しかできない料理人がいるのに近い感じです。