オイシックス・ラ・大地(上)藤田和芳会長が「放射能汚染水」投稿で辞任の波紋
上智大では新聞部主幹、大学当局を糾弾
1947年、岩手県生まれの団塊の世代。上智大学法学部に入学したが、多くの大学が紛争の嵐の中にあり、上智でも全共闘の学生によるバリケード封鎖という時期があった。藤田氏は新聞部に入り、2年で主幹。学生の立場に立って大学当局を糾弾したため、大学側の強い反撃に遭い、新聞は廃刊に追い込まれた。70年卒業後は建築系の出版社に勤務した。
75年8月、学生運動指導者の故・藤本敏夫氏とともに、有機農産物の普及を目指す団体、大地を守る市民の会を立ち上げた。77年に同団体を株式会社に改組し、大地を守る会と名付け、社長に就任。
大地を守る会は単独で株式公開を目指していたが、2016年12月、オイシックスとの経営統合を発表。統合を選択した理由について藤田氏は「大地を守る会はカタログ販売、オイシックスはEC(ネット通販)。大地はネット化で数年遅れている」ことを挙げた。
統合して発足した新会社(のちのオイシックス・ラ・大地)は、オイシックス出身の息子ほど年が離れている高島宏平氏を社長にした。持ち株比率に大きな差があったからで、高島氏が12.75%で筆頭株主、藤田氏は2.72%で7位株主(23年9月末時点)だった。
藤田氏は会長に就任したものの経営の最前線からは外れた。さらに、「放射能汚染水」投稿で会長の座も追われた。
見方を変えてみよう。藤田氏は経営者のマスクを捨て、若き日の反権力の素顔に戻り、社会活動家として再出発できるのだから悔いはないだろう。 =つづく