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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

ラリー大好きだけどズボラもしたい…マイチェンしたGR ヤリス8ATが楽しすぎる!

公開日: 更新日:

GR ヤリス(8DAT 車両価格:¥5,330,000/税込み)

 人の好みは千差万別。一見いなさそうなところにもお客はいるのかもしれない。ってなわけで、今年マイチェンした「公道を走れるラリーカー」ことGR ヤリスに、ユニークな追加グレードが登場した。GR ヤリス8ATだ。正確には“8DAT”(ダイレクトシフトAT)とも言う。

 要は今まで6MTしかなかったモータースポーツ向けモデルに、運転がズボラでラクチンな8AT仕様が追加されたのだ。

 知らない人のために説明しとくと、そもそもGR ヤリスとは、一見大衆コンパクトハッチのトヨタ ヤリスに似た、公道を走るレーシングカーだ。

 ツリ目の顔はまごうことなきヤリスだし、全体のフォルムも似ている。

 だが一般向けヤリスとGR ヤリスはほぼ別モノと言っていい。外板はデザインが似てるだけで5ドアが3ドアになってるし、ボンネットもルーフもドアも形状が違うどころか、軽量高剛性なアルミかカーボン樹脂製になっている。

骨格からエンジンからボディパネルまで別物

 フロアはリアにクラス上のカローラのパーツを使い、スポット溶接数を増加させた専用構造の少量生産モノだし、なによりエンジンが全然違う。

 排気量たった1.6ℓの3気筒ガソリンターボだが、ほぼレーシングユニットとして汎用の約倍の精度で相当な部分が手組され、マイチェン後のピークパワー&トルクは304ps&400Nmとさらに激速化!

 オマケに駆動システムはトヨタオリジナル開発のスポーツ4WDシステムGR-FOURで、大トルクに耐えられるだけでなく、前後トルク配分をモードによって自在に変えられる。

 そもそもWRC(世界ラリー選手権)用のホモロゲーション(認証)用モデルで、これをベースに本気のラリーカーを作るわけだから、骨格からエンジンからボディパネルまで別物なのだ。

 価格は500万円前後と高いし、買うのはモータースポーツファンばかりなので、一見6MT仕様さえあれば十分。だがトヨタ GRはあえて8AT、それも変速プログラムや変速スピードがツウ向けの8DATと組み合わせたのだ。

本物の手応えが得られる街乗りマシン

 正直運転好き向けの8AT、誰が買うのか? と思う。が、乗ってわかった。コイツがかなり楽しく使えるのだ。確かに足周りは硬く、普通の路面でもそれなりに飛び跳ねる。ラフな3気筒エンジンサウンドもうるさめ。

 だが、本当のサーキット仕様ほど硬くないから、毎日走っても疲れないし、長距離もそれなりに乗れる。確かにアスリート用スパイクだが、別に鋲が底に売ってある街を走れないタイプではないのだ。

 ちょっと底が分厚いマラソンランナー用シューズぐらいのイメージだろうか。リアルラリーカー気分と共に街乗りでもフツーに使える。3ドアだし乗り降りは不便だが、リアに大人2人が乗れるし、ラゲッジもリアを倒せばゴルフバッグも複数積める。スライドドア付き軽のような利便性はもちろんないが、結構使えるのだ。

 そうなると……確かに6MT以外も欲しくなってくる。本物の手応えが得られる街乗りマシンとして、ラリードライバー気分でコンビニにポテチを買いに行くにはピッタリなワケだ。

 需要はそうそう多くはないだろう。だが、これもモータースポーツに本気で、なおかつ市販車ビジネスでも世界一なトヨタだから成せるワザ。大谷翔平が遊びで作る家庭料理みたいなもの? かもしれませんよ。

【連載】クルマは乗らなきゃ語れない

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