三田村昌鳳氏 日本ゴルフ界は右に倣えで使命感が足りない

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日本の男女ツアーは派遣業

 ――ファンに勇気や元気を与える米ツアーと日本ツアーとの差は大きいですね。

 それはゴルフに対する社会的価値観の違い。ずっと長い間、ゴルフと国民との密着性がわが国では薄かった。いい例が、いまトーナメントが中止になって、果たしてどれくらいの人が見たいか、といえば、そう多くはないでしょう。一般ゴルファーは自分たちがゴルフをできればいい。だから練習場は超満員であり、ゴルフ場もけっこう混んでいる。ファンに向けて「見せるスポーツ」の染み込ませ方が、日米の大きな差になっている。日本は「するスポーツ」であり、その親分みたいな存在がツアーなのです。

 ――日本で「見せるスポーツ」が浸透しなかったのはナゼですか?

 根底にはスポーツ文化の違いがある。そして米国はどんどんコース設定や試合の見せ方が進化している。例えば、ショットリンクにしてもそう。ネット情報量が圧倒的に多い。だれが何番アイアンを使って、何ヤード打ったとか、それがどこに飛んで行ったのか、ネットですぐにライブ感で楽しめる。そのシステム開発に4億、5億円かかる。ところが日本ではそういう投資をだれもしない。「うちは昔からこういうやり方でやってますから、これまで通りやります」という主催者が多い。ショットリンクのお金はだれが出してくれるの? となる。日本のトーナメントは資金がカツカツの中で行われているのです。だから大きなイベント事業として成熟しているPGAツアーと日本ツアーとでは危機対応もおのずと違う。

 ――組織の在り方にも問題があるのですか?

 放映権とか、大会開催権がスポンサーとテレビ局にある。JGTOは選手と競技委員を派遣する、いわゆる派遣業になっているだけ。それはJLPGAも同じ。両ツアーとも主管団体であり、ツアーの大枠を管理しているだけで、決定権が低い。お金もないから、自分たちでツアーを開催するわけにもいかない。だから、コロナ感染で中止が続いても、なにも動けない。本当はこんな時期だから情報をもっと発信できる組織に変えなくちゃいけない。

 ――どんな手段があるのでしょう。

 たとえば、eスポーツを事業展開する。ツアー会場と同じ舞台でだれでも参加でき、賞金も出して、年間賞金ランキングも決める。今回みたいな試合中止が続く緊急事態でもeスポーツならトーナメントを開催できる。そんな発想を持った組織に変わっていかないといけない。ある意味、今は組織が生まれ変わるチャンスだと思う。

(聞き手=山出辰雄/日刊ゲンダイ)

▽みたむら・しょうほう 1949年生まれ。ゴルフジャーナリスト。大学卒業後、ゴルフ誌副編集長を経て、77年にスポーツ編集プロダクション設立。米国で95年スポーツライター・ホールオブフェイム、96年第1回ジョニーウォーカー・ゴルフジャーナリスト賞優秀記事賞を受賞。日本プロゴルフ殿堂表彰選考委員。日本ゴルフ協会オフィシャルライター。日蓮宗の僧侶(逗子市・法勝寺)。主な著書・訳書に「タイガー・ウッズ 伝説の序章」(青山出版社)、「伝説創生 タイガー・ウッズ神童の旅立ち」(中央公論社)、「ブッダに学ぶゴルフの道」(中央公論新社)。

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