軽くなるプロ野球監督の“地位” パ2球団の人事に評論家嘆き

公開日: 更新日:

「プロ野球の監督に重みがなくなったね。今の12球団の監督に、『野球とは?』と問いかけたら、果たして何人が答えられるか。誰も答えられないんじゃないの?」

 名将・野村克也元監督の言葉である。

 生前、「野球とは? 勝負とは? “とは論”はつまり、問題意識だよ。それが、監督から感じられなくなった。問題意識がない。言葉がない。監督という職業、地位がどんどん軽くなっている」と嘆くことしきりだったが、あの世でもボヤキが止まらないのではないか。

言行不一致の日本ハム栗山監督が続投

 17日、DeNAが来季の一軍監督に三浦大輔二軍監督(46)が就任することを発表。日本ハムは進退が注目されていた栗山英樹監督(59)の続投を決めた。リーゼント頭で就任会見に臨んだ三浦新監督は、「目指すのは優勝だけ。選手だけでなくコーチ、スタッフ、二軍と一つのチームとして結束し、戦っていきたい」と型通りの意気込みを語ったが、ネット上のファンに「どの口が言うのか!」「オマエが言うな!」と一斉につっこまれたのが、就任10年目に突入することになった栗山監督である。

 都内の日本ハム東京支社で畑オーナーから「集大成を見せていただけると信じて栗山監督に2021年のファイターズを託します」と続投を要請されると、大仰な口ぶりでこう言ったのだ。

「丸裸になって、イチからやる。すべてをかけたい。申し訳ないけど、情はすべて捨ててやっていきます」

 通算2081安打の評論家、山崎裕之氏がこう言う。

「栗山監督の『情をすべて捨てて』という言葉に反応するファンの気持ちは分からなくはない。打率.190の清宮幸太郎の使い方もそうだし、3年連続で勝ち星なしに終わりながら来季も現役続行するという斎藤佑樹の扱いもしかり。情に縛られている印象がありますからね。栗山監督は快活で気配りができ、少なくとも人間的に悪い印象を私は持っていない。親会社や球団もそういう部分を評価しているのかもしれない。しかし、それと監督としての能力、責任は別です。日本ハムは2016年のリーグ優勝以降、5位、3位、5位、5位。それでも責任を取らず、来季もユニホームを着る。確かに、ノムさん(野村元監督)が健在なら、『監督はそんなに軽いポジションじゃないやろ』とボヤいているかもしれません」

 栗山監督は昨オフに続投が決まった際も「来年は鬼になる。絶対に優勝する」と大見えを切ったが、結果はご覧の通り。鬼になるどころか、情実起用を繰り返し、淡々と黒星を重ねた。チーム内にすら、「言行不一致もいいところ。言葉だけが上滑りして、選手にも響かなくなっている」との声が出ている。言葉も地位も「軽い」の典型だ。

楽天・石井GMは「取締役GM兼任」で監督に

 楽天では、今季まで編成のトップを務めた石井一久GM(47)が「取締役GM兼任」の肩書で監督に就任した。昨季、チームを3位に導いた平石監督(現ソフトバンク打撃兼野手総合コーチ)をわずか1年で解任。後任にヤクルト時代に同じ釜の飯を食った三木監督を据えたが、こちらもたった1年でクビにし、あろうことか自らがその後釜に収まった。今季の楽天が4位に終わった責任は当然、編成トップである石井GMにもあるにもかかわらず、だ。

「ヤクルト時代の野村監督がまだ若手だった頃の石井を指して、『サインも覚えられないんや』と頭を抱えていたのを思い出します。楽天の場合、本社トップが選手起用にまで介入することもあるという特殊な球団。GMから監督への“鞍替え”を受け入れた石井GMも石井GMですが、1年で監督の首をコロコロとすげ替える本社トップからすれば、野球の監督は会社の部長人事くらいにしか思っていないのでしょう。かつて、優勝監督が続投するのに際し、『やりたいんだったら、おやりになれば』と言ったオーナーがいたが、監督の地位が軽くなったとすれば、そういう親会社の対応も原因でしょう」(前出の山崎氏)

 野村元監督はかねがね、「今の監督人事は処世術が優先されて能力が評価されていない。人がいいとか人気があるとか爽やかでファン受けがいいとか。球団や本社に目利きがいないのも問題や」とも言っていた。

首脳陣を甘やかすCSも元凶

 日刊ゲンダイのコラムでお馴染みの権藤博氏は、「1998年に38年ぶりの日本一を果たした横浜を率いた私も、翌年から2年連続3位に終わった2000年に球団から『ご苦労さま』と肩を叩かれ、ユニホームを脱いだ」と自身の経験を踏まえて、こんな見方をしている。

「クライマックス・シリーズ(CS)が導入されて、責任の所在が曖昧になってしまった。優勝以外は2位も6位も一緒という本来のペナントレースの形に戻れば、首脳陣の評価も変わってくる。2位や3位で首がつながってきた監督、コーチの手腕がシビアに査定され、曖昧になっていた責任の所在もはっきりするはずだ。CSはペナントレースの価値をおとしめるだけでなく、首脳陣を甘やかす制度でもある」

 処世術人事が横行し、それによって誕生した監督が結果責任を問われずに、だらだらとその座にとどまる。軽量級の監督が増えるわけである。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」