菅官邸が恐れる“コロナ対策の顔”尾身会長の「辞任爆弾」
先週来、五輪開催を強行する政府の姿勢に強い言葉で警告を発し続けている新型コロナ対策分科会の尾身茂会長。官邸側は尾身氏の“暴発”を警戒しているという。
【写真】この記事の関連写真を見る(10枚)
◇ ◇ ◇
7日の参院決算委でも菅政権による“尾身外し”が見られた。野党から「五輪開催について尾身氏に諮問しないのか」と聞かれると、西村コロナ担当相は「分科会は五輪開催の可否などを審議する場所ではなく、そういう権限はない」と却下。続いて菅首相も「西村大臣が答弁したような形のさまざまな角度から相談している」と言うだけで、正式な諮問については否定的だった。尾身氏と菅官邸の対立は一段と深まっているように見える。
発端は、2日の衆院厚労委で尾身氏が「今の状況で(オリンピックを)やるのは、普通はない」と断言したことだ。「こういう状況の中で、いったい何のためにやるのか目的が明らかになっていない」と政府の説明不足を批判した。
3日の参院厚労委でも「五輪で人の流れが生まれる。スタジアム内の感染対策だけしても意味がない」と指摘。続く4日の衆院厚労委では、「緊急事態宣言の中での五輪なんていうことを絶対に避けるということ」と言い、「やるのなら強い覚悟でやってもらう必要がある」と厳しい言葉を投げかけた。菅を筆頭とする開催強行派にクギを刺したのだ。
アエラドットは4日、政府関係者のこんな発言を報じた。
<「(菅首相は尾身氏に対し)『黙らせろ。専門家の立場を踏み越え勘違いしている。首相にでもなったつもりなんじゃないか』などと怒りを爆発させています。尾身会長を菅首相が最近、ひどく疎んじているのは間違いありません」>
これまで政府の方針を追認してお墨付きを与えてきた尾身氏が突然、反旗を翻したことが許せないのだろう。
尾身氏は「意外と権力闘争にたけた人」
尾身氏は五輪開催に伴うリスクなどについて、専門家としての提言を20日までに公表する意向を明らかにしているが、田村厚労相は「自主的な研究成果の発表」と切り捨てた。菅官邸の怒りに追随するかのように、政府や自民党内からは尾身氏に対する不満の声が上がる一方だ。今後、官邸と尾身氏の“バトル”はどうなるのか。
「もし、尾身さんから五輪開催について提言を出されても総理は相手にする気はありませんが、あまりに無視して怒らせ、暴走されても困る。これまで総理会見にも同席させてきた尾身会長は、いわば菅政権のコロナ対策の“顔”です。ケツをまくって辞められたら、科学者の意見を無視する首相というイメージが固まり、世論から見放されかねません」(官邸関係者)
実際、尾身氏が三くだり半を叩きつければ、世論は支持するはずだ。菅首相は完全に悪者となり、政権は持たない。それを尾身氏も分かっているから、強気の発言を繰り返すのかもしれない。
「最近の尾身会長の発言は、もしも五輪が中止になった場合に責任を取らされないためのアリバイづくりでしょう。ああ見えて意外と権力闘争にたけた人だから、予算獲得や権限拡大など、何か別の狙いがあって首相に揺さぶりをかけているのかもしれない。抗議の辞任なんて何のメリットもないことをする人ではないと信じたいですが……」(前出の官邸関係者)
尾身氏の本気度にも注目が集まっている。