著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

今季限りで現役引退「22」の負け越しに見る働き者・岩田稔の勲章

公開日: 更新日:

 このころの岩田はナゴヤドームでの中日戦に強かった印象がある。しかし、当時の阪神はナゴドになるとなぜか打てなくなるという相性の悪さがあって、岩田がナゴドで先発するときは投手戦になることが多かった。

「ナゴヤドームでの阪神中日戦はお互い一歩も譲らぬ緊迫した投手戦の末、1―0で中日が勝利。敗戦投手は岩田……」

 アナウンサーのこんなニュース読みは当時の「阪神あるある」みたいなもので、ここで競り勝つのではなく惜敗するところがまた、岩田という投手の特徴だった。

 そう、岩田は打線の援護に恵まれない投手だった。だから、11年の岩田は防御率のわりに13敗も喫していて、翌12年もリーグ最多の14敗(8勝)。本当は勝ち負けが逆になってもおかしくない投球内容で、それが本当に逆になっていたら当時の能見やメッセに並ぶ、もしくはそれ以上にエース扱いされていたのかもしれないのに、実際はなんとも不運であった。

 しかし、今思うと本当によく「働く投手」だったように思う。広く知られているⅠ型糖尿病を抱えながら、毎年ローテを守り、防御率が良くて負け数が多い。なんと不憫な働き者だろう。通算60勝82敗。この22の負け越しが岩田稔の勲章だ。

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