女子団体追い抜きは涙の銀…高木菜那の転倒はなぜ起きた?元五輪代表が4つのポイントを指摘
「やっぱり最後、転倒がなかったら優勝できたかもしれないタイムだったので、悔しいです」
高木菜那(29)は、こう言って大粒の涙を流し、嗚咽した。
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北京五輪スピードスケート女子団体追い抜き、15日の決勝戦。五輪連覇を狙った日本は、まさかの展開でカナダに敗れ、銀メダルに終わった。
平昌五輪以降、さまざまな戦術を試行錯誤した上で、金メダルを取った前回と同様に3度の先頭交代をしながら、新たにレース終盤に後ろの選手が前の選手のお尻を押しながら滑る「プッシュ」を活用する「ハイブリッド型」で臨んだ。
スタートから日本ならではの整った隊列を維持。先頭交代もスムーズだった。残り2周の時点でカナダに0秒86差をつけ、金メダル目前となったラスト1周で悲劇は起きた。
1回戦から3人で滑り切った日本にはやはり疲労が
最終コーナーに差し掛かったところで最後尾を滑ってい高木菜那がバランスを崩して転倒。残り100メートルで連覇の夢が散った。共に滑った妹の高木美帆、佐藤綾乃、そして控えの押切美沙紀は涙に暮れた。銀メダル獲得により高木美帆は日本女子歴代最多となる6個目のメダルを手にしたものの、「(先頭を走った)最初の方にもっとチームにリズムをつくれたんじゃないか」と目を真っ赤にして悔しさをにじませた。
「スタートから流れが良く、3人とも平昌五輪時とは比べものにならないくらい力をつけているだけに、まさかという感じです」とは、2010年バンクーバー五輪・スピードスケート男子代表の土井槙悟氏。
「菜那選手の転倒はいくつかの要素が重なり合ったものだと思います。転倒前の3人の滑りは、先頭の美帆選手にも足の疲れがあったのか、前が詰まっている感じに見えました。菜那選手は隊列のバランスをとるため、手で前の選手を押して距離感を取ろうとした際にバランスを崩したのではないか。カナダの追い上げにより、コーチからの指示も耳に入る。精神的な重圧もあったはずです。そして、菜那選手が体勢を持ち直すことができず転倒したのは、足の疲労が原因でしょう。昨年12月のW杯(米ソルトレークシティー)の決勝最終周の時と同じような転び方でした。足が疲れていないと、後ろにひっくり返るような転び方にはならないものです」
最終周で先頭を滑った高木美がいくらタフだといっても、個人戦を含め5種目7レースを滑るハードスケジュールが影響している可能性は否めない。
前出の土井氏は、「あくまで結果論ですが……」と前置きした上で、こう続ける。
「日本は1回戦から最後まで3人で滑り切りました。この日は、決勝の直前に準決勝も戦った。準決勝の相手だったロシア(ROC)が3位狙いのような滑りで、日本も3周目くらいから流したような形になったとはいえ、少なからず疲労につながったと思います。平昌五輪では準決勝で佐藤選手の代わりに4人目の菊池彩花選手が滑った。菜那選手は厳しいポジション。作戦ミスとまでは言えませんが、控えの押切選手を活用するなど、もっと余裕を持って決勝に臨めたのかなという思いはあります」
高木美は17日の1000メートル、高木菜は19日のマススタートで、やり返すしかない。