中日・根尾昂“理不尽”投手転向を待つ「苦労、課題、成功のカギ」先駆者の元オリ萩原淳氏に聞く

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 15日、一軍の全体練習に姿を見せた中日根尾昂(22)の手には投手用のグラブがあった。17日の巨人戦から投手として登録される。入団以来、内野と外野をたらい回しにされた挙げ句、プロ4年目での投手転向。投手から野手への成功例は多いが、その逆は事例すらほとんどない。根尾にも「難しい」とシビアな声が多い中、この人に話を聞いた。強打の遊撃手としてドラフト2位で入団したものの、9年間で1安打。当時の仰木彬監督の指示で投手に転向すると、9年間で13勝15敗15セーブ20ホールドを記録した。野手から投手の先駆者であり、数少ない成功者である。

 ◇  ◇  ◇

■同僚、コーチからダメ出しの毎日

 ──投手転向のきっかけは?

「言われたのは(2000年の)6月中旬ごろ、ちょうど今くらいの時期でした。肩だけは自慢だったので、投手コーチから『一回ブルペンで投げてみろ』と言われたのがきっかけでした。いきなり145キロくらい出て、年々球速が上がった。その後も1年間は野手との併用でした」

 ──それまで、高校時代も含めて投手経験は……。

「ほとんどありません。二軍球場でキャッチボールをしているときに、カーブやスライダーを遊びながらふざけて投げていた程度。『投手に転向しろ』と言われた際も、まさか自分が投手をやるなんてまったく頭にありませんでした」

 ──転向後に苦労したことは?

「う~ん、練習は野手の方がキツかった。投手の練習といえば、投げるか走るかしかなく、僕は走るのが嫌いで、投げていれば走らなくてもよくなるような感じだったので、投げ込みはよくしていました。とにかく、投手はこんなにラクなのかという印象しかなかった」

 ──周囲の反応はどうでしたか。

「ただ真っすぐが速いだけだったので、『それではプロで通用しない』と周りの人全員に言われていました。ブルペンでは『そんなに急にできるわけない』という目で見られていました」

 ──精神的につらかった。

「僕はあまり気にしないタイプ。ただ、どうやって抑えていいのか、さっぱり分からなかった。自分が投手として成功するかどうかより、何を投げればいいのかということで頭がいっぱい。日々成長したい、とにかく一軍に行きたいという思いしかなかった。変化球を投げるとストライクが入らないので、同僚からもコーチからも『本格的に投手をやるならそれじゃダメだ』と毎日のように言われ、とにかく悔しかった。言葉は悪いが、『ふざけるな、見返してやる』と思っていました」

■変化球習得の必要性、教えを請うた

 ──変化球の習得も苦労された?

「そうですね。球種を増やすことに一生懸命で、ブルペンでは球種が多彩な投手に聞いていた。抑えるためにはフォークが一番早いかなと思い、当時一緒にやらせていただいていた野田浩司さん(1993~2000年までオリックスに在籍)からフォークの握りを一から教えてもらった。試合で投げてみて抑えられたら使えるのかなという感覚の繰り返しでした」

 ──ヤクルト時代、久しぶりに打席に立ったときはどんな感覚でしたか。

「打席に立って本物の投手の球を見たらちょっと怖かった(笑)。でも両方やって良かったと思っています。僕も野手として守っていたとき、制球を乱す投手に、『なんでそんな短い距離でストライクが入らないのか』と思っていたけど、自分がいざマウンドに立つと入らない。どちらの気持ちも分かるようになりましたから」

プロ4年目の投手転向 ケガしないための投げ込みが必要

 ──根尾選手がまずやるべきことは?

「ケガしない体づくりですかね。今の時代、あまり投げ込まないという話も聞くので、投げ込みの少なさが心配。ケガのリスクを心配するあまり、投げずにトレーニング優先になってしまう。今、独立リーグで指導していても鍛えていない子が多いので、少し練習するとケガをする。少し昔の考えを入れて投げ込んだ方がいいと指導しています。ある程度投げた方がケガのリスクは減る。ケガをしない体づくりのためには、時に投げ込みも必要だと思います」

 ──今は投げ込みに対してマイナスな印象も強い。

「今の選手はとにかく効率の良さを考えているようです。練習メニューを課しても、『なぜそれをやらないといけないんですか』と言われることもあって、僕も勉強になりますよ」

 ──根尾選手の体脂肪率は10%。投手転向にあたり、野手時代の体ではスタミナが足りないという指摘もあります。

「僕は野手での練習でスタミナがついていたと思う。僕も野手のときは体脂肪率は1ケタだった。確かに、投手を始めた頃は『ウエートトレーニングをやっちゃいけない』と言われていた。でも、そのまま無視してやり続けていました。自分の納得するやり方でやればいいと思います」

 ──ズバリ、根尾は成功すると思うか。

「センスのある選手だと思っているので、本格的に始めればすごい投手にはなると思う。すべてはこれからの練習次第だと思います。根尾選手は頭も良くて吸収力も高い選手と聞くので、無駄なことはしないと思う」

 ──「投手根尾」として成否を分けるポイントはどこか。今後も代打、代走としての起用に備える方針ですが。

「僕は(投手と野手)両方やるより、どちらか片方がいいと思う。今は二刀流でチャンスが多い方がいいのかもしれないけど、やることも多いし、両方で結果を残すのはなかなか難しい。まずどちらかに専念することだと思います」

▽萩原淳(はぎわら・じゅん) 1973年8月20日、東京都出身。強肩強打を武器に、東海大甲府高で2度のセンバツ出場。高校通算25本塁打。91年、ドラフト2位でオリックスに入団。2000年に内野手から投手に転向。翌01年に一軍マウンドに上がると、02年には48試合に登板。抑えとしても活躍した。05年には自己最多49試合に登板。07年に交換トレードで日本ハムに移籍。そのオフに戦力外となり、ヤクルトに入団。09年には自己最速154キロを計測した。10年に現役引退。愛媛や高知などの独立リーグでコーチを歴任し、現在は富山GRNサンダーバーズの投手コーチを務める。

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