根尾昂わずか4年で野手“クビ”→投手転向の哀れ…育成方針ブレブレ中日フロントの大罪
野手は事実上のクビ、といっていい。
中日の根尾昂(22)が入団からわずか4年で野手を断念、投手に転向することになった。
立浪和義監督(52)は先日、根尾が納得した上での決断として、「(一軍では)2試合しか投げていないが、いきなり150キロを投げてストライクが入る。投手の方が彼の能力が生きる」と説明。今後は一軍に帯同し、主に中継ぎとして経験を積ませ、秋には先発デビューを目指すという。
根尾は大阪桐蔭高時代、投打の二刀流で春夏連覇に貢献。2018年ドラフト1位で入団した際、「遊撃一本で勝負したい」と直訴した。「遊撃・根尾」の一本立ちを望むファンが多いのは想像に難くないが、1年目からの通算成績は109試合で打率.172、1本塁打、20打点と、野手として結果を残せていない。
■大振りはついに改善されず
プロ4年目の今季はキャンプまで内野でプレーしていたものの、開幕直前に外野に転向。開幕一軍入りを果たすも、26試合出場で打率.211、0本塁打、4打点。4月21日には外野手としても出場機会が減ると、遊撃に再挑戦していた。名古屋のメディア関係者が言う。
「立浪監督はかねて、『根尾はホームランバッターではないのに、どうしても大振りをしてしまう。彼の中で、まだまだ自分はホームランを打てるバッターだと。そこを変えないと』と意識改革を求めてきました。しかし、いくら首脳陣が口酸っぱく言っても、数日経てば元の大振りに戻ってしまったといいます。しかも、手でタイミングを取ろうとするため最短距離でバットが出ず、打球が詰まる。これまでの4年間、この“悪癖”が改善されなかった。立浪監督も、抜群に守備がうまかったり、足が速かったりすれば、野手を継続させたはずですが、投手の才能に懸けた格好です」
中日OBの評論家・ギャオス内藤氏は、「投手転向を肯定的に受け止めています」と、こう話す。
「プロ4年目のこのタイミングでの投手転向は早計、との見方もありますが、プロ入りから打者としての成長があまり見られなかったのも確かです。一方で、投手として150キロの力のある直球を投げられるのは、大きな魅力。そんな選手はなかなかいない。150キロを高めではなく、低めに狙って投げられるようになれば、1イニングに集中できる中継ぎとしてなら、面白いとみています」
フロントや首脳陣に振り回され続け…
野手として芽が出ないのは本人にも問題があるとはいえ、プロ入りしてから起用法、育成方針がコロコロ変わるなど、フロントや首脳陣に振り回され続けているのも事実だ。
今季の「内野→外野→内野→投手」というポジション変更もさることながら、遊撃に専念したのは実質的にプロ1年目だけ。2年目は外野に挑戦したと思ったら、二塁を守ることもあった。3年目もキャンプは遊撃でスタートするも、当時の与田監督が左翼を守らせたこともある。中日OBが言う。
「根尾はファンの注目度、期待値がかなり高い。何とか一軍で、という監督の“親心”がかえって、中途半端な起用につながっているのではないか。11年ドラフト1位の高橋周平もそうだった。1年目から『なるべく一軍で使おう』『二軍で鍛えよう』と育成方針にブレが生じ、一、二軍の行ったり来たりが続いた。一軍に定着したのはプロ7年目だった。高橋のように結果的にモノになってくれればいいが、中日では将来の大砲候補にバントを教え込むなどして、小さくまとまってしまう選手もいる。何よりの問題はフロントの育成方針に一貫性がないことです」
■前任者の否定や派閥争いに発展することも
特にこの10年間はその傾向が顕著といえる。04年に監督に就任し、常勝チームをつくった落合博満監督が不人気を理由に11年限りで電撃解任されるや、フロントは落合監督が招聘したコーチ陣も一掃。生え抜きの大物OBである高木守道監督に交代すると、コーチ陣は生え抜きOBで固められた。
その2年後の13年オフ、高木監督が2年契約を終えて退任すると、今度は「落合GM-谷繁監督」体制となり、首脳陣は再び落合派で固められた。しばらくして落合GMと谷繁監督の対立が表面化し、森監督体制に移行。しかし落合GMが17年1月に退団すると、森監督もわずか2年で退任し、与田監督体制に。再び落合派コーチが外へ追いやられた。
「大半の球団は球団本部長、GMが編成、育成を管理し、誰が監督になってもその方針は一貫している。中日にはそれがない。落合さんが編成権を持っていた時代はまだしも、フロントは監督が補強などの編成に口出しすることを良しとしない一方で、育成を監督任せにする傾向がある。監督が代わるとコーチが代わり、そのたびに方針や指導法はリセットされる。時に前任者のやり方を否定したり、派閥争いにさえ発展することもある。与田監督時代は、落合さんの息がかかった小笠原二軍監督との間で連携が取れていなかった。こんな体制では育つものも育ちません」(前出のOB)
根尾の投手転向は、球団が抱える根本的な問題と関係がありそうだ。