見事だったWBC決勝での侍J継投策 吉井投手コーチは“一球入魂”の落とし穴を熟知していた
負ければ終わりの一発勝負となった準々決勝から、相手のレベルとモチベーションは一気に上がる。準々決勝のイタリア戦では、先発した大谷が五回途中で降板。打順が2回り目に入った五回に2安打2死球で2点を失った。
初回から「ウォリャーッ!」と一球ごとに咆哮しながら、フルスロットルの投球。当然、心身は早くへばるし、投球に遊びがないから次第に打者にタイミングを合わせられる。常に目いっぱい力いっぱいだと投げる球に強弱がなくなり、直球でも変化球でも空振りが取れなくなる。あの日の大谷がまさにそうだった。
準決勝のメキシコ戦に登板した佐々木朗希、山本由伸もそう。先発して4回を投げた佐々木も2回り目に入った四回に3連打で3失点。連打で許した2人の走者を置き、それまで威力抜群だったフォークを左中間スタンドに運ばれた。山本も同様でそれまで3回無安打と完璧だったが、4イニング目に3安打とつかまり2点を奪われた。
日本が誇る3本柱でもこうなのだ。一球入魂、気合が入りまくるがゆえの落とし穴で、だからこそ決勝戦の継投策は大正解。侍ジャパンの3大会ぶりの世界一は、打たれる前に代える、という継投の要諦を忠実に実践した、吉井投手コーチの勝利でもあった。